世界のフィールドから From "Fields" around the World

2026年7月号

呑んで賭けて、お葬式

岡田龍樹 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

専門:水産保全学・水産経済学、フィールド:カンボジア・氾濫原

「身内に不幸があったから見にこないか」。よく漁に同行させてもらっている漁師さんが夕食後に誘ってくれた。親族の方には申し訳ないが村の儀礼を見られるチャンスだと思い、喜んでついていくことにした。気になったのは、手でクイッとお酒を飲むジェスチャーをしていたことである。どういうことかわからないまま、とりあえず白シャツに着替えて彼のバイクに乗った。

夜の9時だというのに、会場の家が近づいてくると、がやがやとした話し声が聞こえてくる。到着すると、テーブルを囲んで男たちが盛り上がっている。ムワッとした熱気。ときどき、ウワーっと大いに熱狂する。促されるままテーブルの一つに着くと、当然のようにトランプと「スラソー」と呼ばれる自家製蒸留酒が配られる。蒸留酒は300mlのペットボトルに入れられており、逆さにして底を切った即席の盃で飲む。

「やったことはあるか?」「ない」「とりあえず見とけ、その前に一杯」。こうして賭けトランプが始まった。卓についたのは5人。ルールは簡単で、より大きい数字を出していき、最初に手札のなくなった人の勝ちである。1ゲーム10分くらいで終わる。驚いたのは、罰ゲームである。卓上のお酒を一気飲みするのだが、最下位だけでなく、下位3人が飲む。5人中3人。初心者の私はほぼ毎回飲むことになった。3ゲームほどでボトルが空になりほっとしていると、灯油タンクが運ばれ再びボトルを満タンにした。どれだけ飲むのだろうか。実は、飲んでいない卓もあるのだ。しかもお酒を飲む卓よりも盛り上がっている。それはお金を賭けているからである。大きな卓に10人ほどのプレーヤーが着席し、その周りを立ち見の見物者が埋め尽くす。お金がかかっている分、皆カードを切る気迫が違う。

少し離れた場所では、女性たちがせっせとお粥を作っている。10時半になるとお粥が振舞われて、一旦賭けは休戦。食べ終わったあと私は帰宅したが、会は朝まで延々と続いたそうだ。

撮影フィールド

カンボジア王国・シェムリアップ州・コンポンクレアン水上村