世界のフィールドから From "Fields" around the World

2024年10月号

外遊びで育まれる子どもたち

那賀裕朗 (東京大学大学院医学系研究科)

専門:人類生態学、フィールド:マレーシア

2024年8月、狩猟採集民バテッの村に向かった。昨年も訪問しているため、今回は2回目の訪問だ。変化のない単調なアブラヤシプランテーションの景色に囲まれ、舗装されていないガタガタ道を車で2時間ほど走り、村に到着した。

荷物を置くや否や、村の子どもたちに捕まり、早速遊び相手をさせられた。子どもたちの遊びは、鬼ごっこやボールを蹴ったり投げたりするシンプルな遊びが多いが、中には輪ゴムでカマキリを仕留めたり、どこからか持ってきた大きなバケツの破片をソリ代わりにして坂を滑ったりといった、凝った遊びをする子どももいた。彼らは怖いもの知らずで、とても活発だ。舗装されていない道を裸足のまま全速力で駆け回り、派手に転んでも、ケタケタと楽しそうに笑っている。

そうして毎日遊んでいるからか、子どもたちの体つきはスリムだぷくっとしているのはせいぜい2~3歳までで、5~6歳になる頃には筋肉質で細身な体つきになっている。また、子どもにしては足の裏が分厚く、硬い。このような特徴は、彼らの遊びを通じて育まれているのだろう。身体と同様に、精神も育まれている。カマキリを輪ゴムで仕留める遊びがその良い例で、身近なものを道具とし、野生の動物を捕まえる感覚を自然に養っている。

遊んでいるうちに日が暮れ、家に戻った。ぼーっと休んでいると「ご飯を食べるか?」と声を掛けられたので、ありがたくいただいた。その日の夕食はイカン・ゴレン(魚の炒め物と大量のご飯で、彼らの中ではオーソドックスな料理だ。塩と味の素でシンプルに味付けされたその料理は、疲れた私の体にちょうど優しく染み渡った。子どもたちも私に負けじと勢いよくご飯をかきこんでいたが、お母さんたちに「そんなに食べたら吐いちゃうよ!」と怒られていた。

明日は上流のキャンプに連れて行ってもらえるらしい。「上流にはドリアンがたくさんあるぞ」と言われ、ワクワクした気持ちで眠りについた。 

撮影フィールド

マレーシア・クランタン州

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