世界のフィールドから From "Fields" around the World
2024年12月号
礼拝には「綺麗な服」で
西坂季恵 (東京大学大学院)
専門:文化人類学、フィールド:インド/グジャラート
簡単にお参りするだけなら洋服でもいい。長く寺院でお参りをするならサリーか、サルワール・カミーズにドゥパッターという長いスカーフのような掛け布を身につけて行くことが好まれる。
ジャイナ教白衣派では女性信徒も、神の像に直接触れる礼拝をする。これをするには新しいサルワール・カミーズかサリーなど礼拝用の服が必要だ。礼拝用の服で食事やトイレに行くことは許されないため、信徒らは礼拝終了直後、すぐに日常着に着替える。礼拝用の服や礼拝のための新しい服で礼拝後の施食に参加してしまうと、その服は日常着となる。
ある日、近日中に出家者らを囲んだ式典があることを知った。私はインド到着直後に黄、緑、白の3着の新しい服を購入した。しかし、黄と緑の2着はそれ以前の特別な礼拝で着用し施食まで参加してしまったため綺麗ではない。式典を知らせてくれた信徒は、必ずしも新品である必要はないが綺麗な服がいいと言い、滞在先アパートの住人だった信徒女性は黒や青ではなくオレンジや赤、ピンクなどの明るい色が好ましいと教えてくれた。
その時点でまだ日常服になっていない服は白だった。白も明るい色だろうが彼女のおすすめとは異なる。結局、前日に淡いピンクのサルワール・カミーズとゴールドのドゥパッターを購入した。当日それを着ていくと、信徒らに「綺麗な服だね」と声をかけられた。どうやら、私は “TPO” にあった服を着ていたようだった。
フィールドワークも終盤になると日常着になった服しかなく、簡単な参拝しかできないでいた。それに女性出家者らが気づいたのか、「服がないんでしょ?」と言い当てられ、新しい服を数着くれた。翌朝、その服で寺院内の全ての神の像に礼拝をした。この日は全ての礼拝に参加できた達成感か安堵感からか、とてもいいことをしたような気持ちになった。同時に、信徒らの信仰生活には常に綺麗な服が必要であることを真っ白に輝く荘厳な寺院のもとで再確認した。
撮影フィールド
ジャイナ教寺院前
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