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世界のフィールドから
From "Fields" around the World
2025年2月号
女子寮での暮らし
中島梨乃 (一橋大学大学院社会学研究科)
専門:社会学、フィールド:トルコ
トルコのアンカラに来て、2ヶ月が過ぎた。今私が住んでいるのは、Airbnbで見つけた民間の女子寮だ。民泊仲介サービスのAirbnbをできるだけ利用したくなくて(※)、寮の公式サイトを探して直接連絡すると、Airbnbで表示されていた金額の半額以下で契約できた。
部屋は4人部屋。トルコ人、パキスタン人、エジプト人、そして私。ただ、トルコ人の子は普段彼氏の家に泊まっているようで、この2ヶ月間部屋で寝ているのを見たのは数回だけ。なので、実質3人暮らしだ。
パキスタン人の子は、この9月に大学生になったばかり。医学部に通っているが、彼女の授業はほとんどがオンデマンド形式らしく、いつも寮でパソコンと向き合っている。深夜に何度も鳴るアラームと、インスタントラーメンかお菓子しか食べていない様子を見て、私はつい心配してしまう。
エジプト人の子は、おしゃべりが大好きで、いろんな話を聞かせてくれる。トルコのナショナリズムやイスラームにうんざりしていること、エジプトには帰りたくないこと、フェミニストが嫌いなこと、アラブ料理(ただしエジプトではなくレヴァント地方の)の作り方、今までの恋愛遍歴、そしてパレスチナのためにどんな商品をボイコットすべきかなどなど。
エジプト人の子の提案で、毎週土曜日はお掃除DAYになっている。私は掃除が嫌いだ。おそらくパキスタン人の子も。掃除をしてくれる人が週に2回も来ているのに、なぜ自分たちでも掃除しないといけないのかと抗議したが、「彼女たちの掃除の仕方が嫌いだから」と私の要求は一蹴された。
私以外の3人は大学の期末テストを終え、今日から家族のもとへと帰ってしまった。部屋をひとりじめできるのは嬉しいけれど、やはり少しさみしくて、寮の共有スペースでこの文章を書いている。
(※)パレスチナ解放のため、イスラエルに対するボイコット(Boycott)、投資撤退(Divestment)、制裁(Sanctions)を呼びかけるBDS運動において、Airbnbは圧力対象(Pressure Targets)のひとつになっている。
撮影フィールド
トルコ