世界のフィールドから From "Fields" around the World

2025年9月号

日曜日の朝、グラウンドの風景から

阪口諒祐 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

専門:穏健イスラーム、地域研究、フィールド:インドネシア

インドネシアでは、サッカーがとても人気のあるスポーツだ。私が滞在していた期間には、ちょうどW杯のアジア最終予選が行われており、日本との試合も組まれていた。試合当日になると、多くの人が店先などのテレビを取り囲んで歓声を上げており、私もその輪に混ざりながら密かに日本を応援していた。

そんなサッカー熱の高いこの国で、私が下宿していた家から歩いて5分ほどの場所に大きなグラウンドがあるのだが、日曜日になると、そこでは決まってたくさんの子どもたちが集まりサッカーをしていた。その光景を見るたび、曜日感覚の乏しい私は「ああ、今日は日曜日なんだな」と思わされる日々だった。

見たところ、子どもたちは年齢ごとにグループ分けされていて、私がその時見ていたのは恐らく5~6歳くらいの一番小さなグループだった。朝早く、子どもたちは親のバイクに乗せられてグラウンドにやって来る。まだ一人で降りられない子は、親に抱っこされながら降ろしてもらっていた。試合が始まると子どもたちは一心不乱にボールを追いかけ始める。そこにフォーメーションや戦術などはない。ただボールに向かって走って、蹴って、また追いかけて――。それだけでグラウンドは笑い声と熱気に包まれていた。

そんな中、静かにその様子を見守るお父さんの姿も見られた。私はその後ろ姿に、ふと自分の父の姿を重ねてしまう。私も子どもの頃、野球をしており、父はいつも遠くから静かに私のプレーを見守っていた。あの時の父も、きっとこんなまなざしだったのかもしれない。

その光景は、日本中どこにでも見られるような風景と、何ら変わらないものであった。遠く離れた国で、こうした日常に出会えること。そのことを改めて噛みしめることができたのは、異なる文化圏で暮らすという「非日常」を経験しているからなのかもしれない。私は子どもたちの一生懸命プレーする姿を写真に収め、家路についた。

撮影フィールド

インドネシア・西ジャワ州

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