世界のフィールドから From "Fields" around the World

2025年11月号

語り合い、分かち合おうとすること

雑喉萌 (愛知県立大学大学院国際文化研究科)

専門:文化人類学、フィールド:アメリカ、ガーナ

2023年に、カリフォルニア州にあるデイビスという町及びカリフォルニア大学デイビス校にてフィールドワークを行った。大学や町の中にカフェがいくつもあり、作業やおしゃべりをする場所にも困らないところがお気に入りだ。

デイビスでの3ヶ月間、現地学生や留学生、ホストファミリーとさまざまなことを語り合った。英語が出てこなかった時に「Take your time.(焦らなくていいよ)」、「It’s Okay!(大丈夫だって!)」と言って励ましてくれるとても温かい人々だ。

教育についての調査をしようと思っていたものの詳細なテーマが決まらなかったわたしは、ある現地学生の友人に「幼少期からこれまでの教育に関するあらゆること(家庭から学校、課外活動まで)について教えてほしい」という無茶なお願いをしたことがある。彼は快く受け入れ、わたしの不慣れなインタビューに何時間も付き合ってくれた。慕っていた先生の話やこれまでの課外活動、ホームカミングに同級生を誘ったことなどいろいろなことを語ってくれた。
日本で教育を受けてきたわたしと、アメリカで教育を受けてきた彼とでは当然異なる経験をしてきたが、その違いを面白がりながらも相手の腑に落ちるまで自身の経験を説明し合う時間を過ごすことができた。

彼の他にもアメリカで生まれ育った学生、ベルギーの留学生、アメリカで生まれ育ったホストファミリーなどいろいろな人と語り合った。たとえ第一言語やバックグラウンドが違おうと、互いが向き合って語り合うこと。そしてお互いについてのさまざまなことを分かち合おうとすることは不可能ではないと実感した3ヶ月間であった。

対立が煽られ、深まっているように感じるこの頃だが、語り合おうとすることを忘れずにいたい。語り合うとはそれぞれの意見をぶつけ合うことではなく、時に相手の言葉に耳を傾けてみることなのだと思う。

撮影フィールド

Coffee House, University of California, Davis(学内にあるカフェ)

年別アーカイブ
2025年 (11)
2024年 (3)