躍動する南アジアのポピュラー音楽文化の諸相
多民族・多宗教・多文化が混在する南アジアでは、さまざまな音楽文化が人々によって奏でられ、歌い継がれてきた。そのような音楽文化は、ある時は共同体をつなぐ絆となり、ある時は権力に対しての抵抗運動となり、そしてある時は言葉にできない心情の表現となった。本ワークショップでは、南アジアにおいて発展してきたポピュラー音楽の諸相について議論を深める。 インドでは長らく映画音楽産業の中でポピュラー音楽シーンが形成された。しかし、近年のインディーズ・レーベルの勃興は、これまでのポピュラー音楽シーンとは違う新たな潮流を生み出している。さらにその流れは海を超えて、南アジア系移民の音楽ともつながり、ハイブリッドな音楽文化が形成されている。 一方、インド各地域のポピュラー音楽も、それぞれの歴史と文化に根差し、他地域の音楽に影響しあいながら、たくましく息づいている。そして周辺国に目を向ければパキスタンやバングラデッシュには、詩歌の伝統を汲むポピュラー音楽の文化が豊かに発展している。このように地域や国境を越え、南アジアのポピュラー音楽シーンは新たな時代を迎えているといっても過言ではないだろう。 一方、南アジア音楽文化の将来については、楽観視できない現状もある。社会問題や権力関係性において、どのような方向に向かっていくのだろうか。西洋主流のポピュラー音楽産業に対して、本地域のポピュラー音楽文化はなにを提示していくことができるのか。 南アジアのポピュラー音楽文化の諸相について参加者で分かち合いたい。