
フィールドワーク関連のお知らせ
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Workshop “Researching (Post) Conflict-Affected Settings in the Middle East”/ワークショップ「紛争下/紛争後の中東地域を研究する」
| 紹介文 | シリアをはじめ中東での政治・民衆運動を専門とするライラ・サーレフ氏を迎えて、紛争下や紛争後の地域を研究する場合、どのような方法が可能であるのか、何を知り、意識する必要があるのかを考えました。 |
| 形式 | ワークショップ |
| 開催日 | 2025年11月10日(月) 13:00〜15:00 |
| 場所 | 東京外国語大学AA研3Fセミナー室 301およびオンライン |
| 報告 |
紛争下や紛争後の地域を研究する場合、どのような方法が可能であるのか。何を知り、また意識する必要があるのか。本ワークショップでは、シリアをはじめ中東での政治・民衆運動に関する多くの著作を持つライラ・サーレフ氏を迎えて、参加者とともに中東地域の研究において重要なこれらの問いを考えました。 “A thoughtful seminar that skillfully reminded us that post‑conflict research in the MENA is never truly finished; it demands immersive fieldwork, constant ethical reflexivity, and a humble awareness of our own positionalities, while aiming for insights that can resonate across the region.” (Shima Waked, Ph.D Student, TUFS) “私自身の研究テーマも内戦であり、対象を含めた周辺地域も不安定な状態にあるため、現地に赴くという方法をとることができない。また、ある事象の変遷について書く際、自身の記述で対象を齟齬なく描写できているのかといった悩みがどうしてもぬぐえなかった。しかし今回、その事象について歴史書を何冊も重ねて確認することや、本に記載されず、認識からこぼれてしまうような情報をインタビューで拾い上げることが必要であるという話を聞き、今後の研究でも生かしていきたいと思った。” (大橋悠佳、創価大学文系大学院、博士前期課程) “フィールドワークで、とくに紛争を経験した人々から話を聞く場合、どのようなことを心がけて調査を行うべきかなど、紛争後の社会における調査の心得を学ぶことができた。以前、シリア難民の方に内戦中の経験談などについて尋ねようと試みたことがある。初対面であり、内戦というトラウマを抱えておられる方に気安く戦争のことを聞いてよいものかと悩んだ末、結局聞きたいことを聞けずに終わってしまった。…相手からどのように話を聞くのが最善だったのかと悩んできたが、今回のワークショップを通じて、内戦後の社会でフィールドワークやインタビュー調査を行う際に、何を考慮し、どのような事前準備をする必要があるかなどの知見を得られた。” (藤永凜、立命館大学大学院、博士前期課程) “ポジショナリティは個人が選べない位置づけである。だが、フィールドで出会った人びとの語りを「生きた経験」として捉えることで、研究で扱った事象を単なる「研究の事例」と固定せず、研究者と調査対象の「内/外」の境界を流動的に理解することが可能になる。これは、相手との信頼関係を築くことにもつながる。研究者は特殊な存在であり、対象について知ろうとすること自体が一定の暴力性を帯びる。しかし一方で、地域研究は他地域との比較を通じて自分の社会を再考する営みでもある。本ワークショップへの参加を通じて、フィールドやデータとの向き合い方のみならず、ポジショナリティを新たな社会的関係性を生み出す概念として捉える視点を得た。この視点を、今後のフィールドワークでも活かしていきたい。” (濱中麻梨菜、東京大学大学院、博士課程) 詳細な報告はこちらをご覧ください。 当日のプログラム13:00-13:05 Introduction (Emi Goto, ILCAA, TUFS) 講師についてライラ・サーレフ氏はアラブ地域の政治と国際関係を専門とする政治学者。抗議、革命、市民活動、民主化、ジェンダーに関連する「下からの政治」に注目している。デモ=チュニジア 持続的民主化フォーラムの研究ディレクター、Brill社の雑誌『Protest』副編集長。2024年に研究員として千葉大学に所属。主な著書に『チュニジアの革命と民主主義』(オックスフォード大学、2024年、ラルビー・サディーキー氏との共著)、『アラブ世界における米国のハードパワー:レジスタンス、シリアでの蜂起、対テロ戦争(ラウトレッジ、2017年)』などがある。 |
| 報告執筆者 |
後藤絵美 |
| 関連URL | https://fieldnet-aa.jp/member-info/event-conflictaffected20251008.html |