■プログラム 14:00 オープニング(吉田ゆか子 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所) 14:10-15:00 作品上映 「光と風と水と土」 15:00-15:10 休憩 15:10-16:00 作品上映 「ハナコとカミサマ」 16:05-16:55 トーク+質疑応答 イリナ・グリゴレ(弘前大学 客員研究員)+川瀬慈(国立民族学博物館 准教授) 16:55-17:00 クロージング(藤田周(TUFSフィールドサイエンスコモンズ))
■作品紹介 『光と風と水と土』(2022/50分/民族誌映像) この映像は岩木山麓にある青森県弘前市五代地区に16世紀から伝承してきたとされる「五代獅子舞」における女性の踊り手の記録である。五代獅子舞では、30年前に地域の軋轢を乗り越えて、初めて女性の踊り手が認められた。現在保存会会長として、自身も演舞しながら地域の子供に踊りを教えることによって未来の担い手の育成に務める指導者である。本映像では、保存会会長として組織運営に積極的に関わり、踊りの指導をしながら女性として裏方役もこなしている姿を映し出すことによって、地域コミュニティの人口減少と向き合いながら、民俗芸能の担い手を育成する女性の活動について映し出すものである。 東京の芸術家コミュニティで出会った夫とともに、実家であるりんご農家を継いだ。そして、夫の死後は、ほぼ一人で薬掛けをはじめとする農作業を毎年行っている。本映像では、繁忙期の鈴木さんの日常の姿を捉えながら、鈴木さんの家族の「不在になる存在」、すなわち亡き夫、義理母、先祖との関係性についての間身体性に焦点を定めることによって、映像によるイメージの新しい解釈を導く。
監督・脚本・編集:イリナ グリゴレ、奥村華子 撮影: イリナ グリゴレ 出演: 鈴木惠子、弘前市五代獅子舞保存会
『ハナコとカミサマ』(2023年/50分/民族誌映像) 青森県の津軽地方でフィールドワークしている制作者は、女性の身体というテーマをいかに民族誌の対象とするかという課題に取り組んできた。この映像では、女性の語りに注目し、フィールドの「語り」をどう民族誌映像に収めるのかについて例示する。津軽地方に生活するシングルマザーのハナコの語りは詩的でもあり、メタファーとイメージを中心とするコミュニケーションである。そして、身体のエクリチュールとしての語りをイメージ化することによって、地域社会に生きる女性について民族誌化にする。この映像では被写体の内面世界あるいはインフォーマントの精神世界を、アニミズム的な周辺環境との接合として捉えながら、それらを「ミクロ感覚」レベルで映し出す。インフォーマントが東北地方のシャーマン「カミサマ」に身辺の悩みを相談しに行くという、なかなか映像化されることのないシークエンスを中心に、この映像では自然と身体についての内面的な世界を描き出す。 監督・脚本・編集:イリナ グリゴレ 撮影: イリナ グリゴレ、奥村華子 出演: 奥村華子、カミサマ
■監督プロフィール イリナ・グリゴレ(弘前大学 客員研究員) ルーマニア生まれ。2013年東京大学大学院博士課程に入学。青森県内を主なフィールドに獅子舞、女性の身体などをテーマに研究している。また2023年からバヌアツで女性に関するフィールドワークを開始している。
■登壇者プロフィール 川瀬慈(国立民族学博物館 准教授) エチオピア音楽・芸能の映像人類学研究に基づき、映画、詩、小説、パフォーマンスの創作を行う。主な映画に『Room 11, Ethiopia Hotel』、『僕らの時代は』、『ラリベロッチ-終わりなき祝福を生きる-』、『精霊の馬』、『吟遊詩人-声の饗宴-』。主著に『ストリートの精霊たち』(鉄犬ヘテロトピア文学賞)、『エチオピア高原の吟遊詩人うたに生きる者たち』(梅棹忠夫・山と探検文学賞、サントリー学芸賞)、詩集『叡智の鳥』。オンラインジャーナルTRAJECTORIAの編集及び、Anthro-film Laboratoryの共同運営を行う。http://www.itsushikawase.com/japanese/
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