
多様な社会・環境系を可視化する:レジリエンスからロバスト性へ
本シンポジウムは、農業・農村の問題の科学的解決を目指す研究と、これらを取り巻く社会動態の解明を目指す研究を融合的に取り扱いながら、肥沃な三日月地帯とその周辺域に迫るものである。両分野において得られる時系列データについて、モデル化や解析などの数学的手法と、フィールドワークを含む社会科学的手法を提示し合いながら、地域の多様で複雑な社会・環境システム(socio-environmental system)について意見交換を行うことを目的とする。個別の科学的事象の解明とともに、社会政治的背景のより正確な理解とを同時に行うことで、有用な提言が可能となると考える。本シンポジウムが新たに提示するのは、同地域の脆弱性に取り組むための知見や方法を共有し、脆弱性の限界を克服するための、ロバスト性という概念である。ロバスト性とは、社会や環境における不安定な平衡点やレジーム・シフトを許容しながら、摂動を巧みに制御することでリスク回避へと導く。多様な集団を抱える肥沃な三日月地帯においてはロバスト性の実現こそが、目指すべき目標となるのではないだろうか。シンポジウムの参加者は、肥沃な三日月地帯の多様な社会・環境に関する複雑なシステムを可視化するための異なる方法論、統計分析、化学分析、数学モデリングなどを検討していく。