フィールドワーカーから寄せられた地域別の現地情報です(2010-2015年頃)
シンガポール
1.外務省ホームページ 各国・地域情勢
シンガポール共和国: http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/singapore/index.html
2.旅行情報(空港、ホテル、換金/TC、治安など)
日本からシンガポールへは直行便が各種飛んでいるほか、クアラルンプール経由のAirAsia、台北経由のScootなど、多くの便が選択できる。到着はいずれもチャンギ空港だが、利用するフライトにより到着ターミナルが異なる。それぞれのターミナルは入国前エリア、入国後エリアとも、スカイトレインで結ばれていて、それぞれのターミナル間を1~2分程度で移動できる(ただしターミナル2とターミナル3はターミナル1を経由するため、若干時間がかかる)。格安航空会社(LCC)を利用する場合、最近まではバジェット・ターミナルを利用していたが、現在、格安航空会社専用ターミナルのターミナル4を建設するために、バジェット・ターミナルは閉鎖されているので、多くの会社がターミナル2を利用している。2017年にターミナル4が完成したら、格安航空会社はターミナル4に移る予定である。
空港から市内へ
チャンギ空港からは、荷物が多ければタクシー、エアポートシャトルが便利。タクシーはメーター制だが、空港チャージ、高速代、シティエリア料金、ピークタイム料金、祝休日料金、深夜早朝料金などが支払いの際、加算される。市内中心部まではトータルで約30ドル。エアポートシャトルはミニバンを使った乗り合いタクシーで、市内まで9ドルで行ける。行き先を空港のカウンターに伝えると、方面ごとに違う車に乗るよう振り分けられ、その車ごとにお客さんがある程度集まった段階で出発することになる。空港から市街地へは便利だが、空港へ向かう場合には、宿泊エリアにより利用できないこともある。
荷物が少ない場合には、MRT(列車)を使うのも便利。ターミナルの地下はMRTの始発駅になっており、Tanah Merah駅で乗り換えて、市内まで約30分で到着する。料金はスタンダードチケット(プラスチックのカードで、デポジット1ドルが必要となる)で2.6ドル。滞在中に市内で、バスやMRTを利用する予定があるなら、ezlinkカードを買っておくと便利。
市内へはバスもあるが、荷物が大きい場合、市内の地理にあまり詳しくない場合には、オススメしない。日本のように、バス内で次の停留所の案内が出るバスはごくわずかで、音声案内はまったくない。
市内での移動手段
市内の地理に慣れるまではMRTとタクシーが便利。タクシーも深夜早朝料金(50%増)で長距離(島の縦横断など)に乗るのでもなければ、そんなに高くないので、居住者も多くが気軽に利用する。慣れてくればバスの利用もかなり便利。街中の駅間、不便な郊外へも、歩く距離を最短にして移動することができる。Streetdirectoryなどのスマートフォン・アプリ、ウェブ検索サイトで、乗り換え案内やナビゲーションが利用できるので、これらを利用するとよい。MRT、バスともezlinkカードで利用できる。
ただし、MRTの乗り換え、バスの乗り換えには、思いがけず時間がかかる事も多いので、時間に余裕をもって行動する必要がある。特にバスの乗り換えを伴う移動は、バスの本数や運行時間などの都合で、かなり時間がかかるので、急ぐときはタクシーの利用が現実的である。
なお、タクシーは街で流しているのを拾うこともできるが、流しを拾うのは近年、かなり困難になりつつある。特にシティエリア内ではタクシースタンドなどで並んで待っていても、電話でブッキングした客が同じスタンドにいて、当該タクシーに乗って行ってしまうので、なかなか乗れないことも多い。電話、SMS、あるいはスマートフォンのアプリで先にブッキングをしておく方が確実。ブッキングはすぐにブッキングすることも、事前ブッキングすることもできる。予約した場合、タクシーのナンバーと車種とが事前に伝えられるほか、予約時間に、指定した電話番号へ電話でタクシーの到着を知らせてくれるサービスがある。
ezlink(イージーリンク)カード
Suicaなどと同様の交通系電子マネーで、交通機関のほか、7-11などのコンビニ、大学図書館のコピー機などでも利用することができる。
デポジットは5ドルで、12ドルから購入が可能(7ドルが利用可能分)。料金の追加はMRTの駅、コンビニなどで可能。通常、料金の追加はTop upと呼ぶ。
なお類似カードでNETSカードがあるが、こちらはシンガポール居住者で、銀行口座をシンガポール国内に持っている人のみが便利に利用できる。短期滞在者でも購入、利用できるが、Top upはコンビニでしか出来ないし(銀行口座があれば街のあちこちにTop up機があるので、ezlinkより簡単にTop upできる)、カードを使用しないからといってリファンドしようとしても、シンガポール国内に銀行口座がないとリファンド出来ないので要注意である。大学図書館等のコピー機での使用率が高く、持っていると便利なように思われるが、銀行口座が作れるほどの長期滞在でない場合は、ezlinkカードを使っておく方が無難である。
ホテル、アコモデーション
シンガポールは近年、急速にホテル代が高騰し、滞在費には相当な予算を必要とするようになった。比較的安価なビジネスホテル・チェーンもあるが(100ドル以下)、値段の割に設備が古い、水まわりがあまりきれいでない、窓がない、部屋でのWifiが有料、立地条件が悪い(交通アクセスがよくない、あまり風紀が良くない地域に立っているなど)など条件が悪いこともあるので、事前によく確認した方が良い。窓がなく換気ができない部屋は、高温多湿のシンガポールで、クリーニング屋や洗濯機を使わずに生活するには厳しい。短期の場合は、ある程度のレベルのホテルに滞在した方が快適である。ただし、ドミトリーでもよいならば、比較的安価な滞在も可能。その際には、自分の身の回りの貴重品などの管理と、衛生状態によって罹患する可能性のある病気(2012年現在、デング熱が発生中である)などには、自分で気をつける必要がある。なお、これらのホテルやアコモデーションは、事前にWebサイトで検索して予約すると、直接予約するより安いので、これらを利用すべきである。キャンペーン料金でよいホテルに泊まれることもある。
なお、すでにシンガポール社会にある程度慣れている、あるいは長期滞在の場合、ホテルに滞在する代わりに、個人宅にシェア・アコモデーションなどの形で滞在することもできる。滞在費はホテルに比べてかなり割安で、キッチンや洗濯機、Wifiなどが利用できることが多い。Webサイトやスマートフォンのアプリでそうした滞在先を探すことができるが、宗教、食事などのタブーへの配慮が必要なほか、共用部分の利用条件(リビング、ダイニング、バスルームなど)、各種機器(テレビ、キッチンまわり、洗濯機など)の利用方法、ハウス・キーピングの使い方(学生同志のシェアでも、普通に掃除のためにハウス・キーピングを外注していることが多いが、その費用は入居者でシェアする)等、ハウス・ルールは厳しいことが多い。またホテルではないので、入居、退居にあたって、事前に管理者と相談が必要である(ホテルのように自由にチェックイン、チェックアウトできるわけではない)。ホテルではなく、あくまでも寮生活のように、住空間をシェアしていることを自覚しておかないとトラブルになる(自室も整理整頓し、きちんと使うことが望ましい)。また一般に、キャンセルポリシーは厳格であるので、安易に予約し、キャンセルすることは避けたい。3ヶ月以上の長期滞在の方が物件は多く、その場合、事前に連絡して内覧させてもらうことも可能である。
両替、銀行
市内各地に銀行も両替屋もあり、換金で困ることはない。銀行より、ショッピング・コンプレックスに入っている両替商のほうがレートがいいことも多いが、大金を両替するのでなければ、大きくレートが違うわけでもないので、空港の銀行で両替してしまうのも悪くない。なお、銀行のATMは市内各地にあり、日本のキャッシュカード(海外対応のカード、口座)でシンガポール・ドルを引き出すことも可能。レートは若干悪くなるが、これがもっとも便利で安全だと思われる。
クレジットカードはVISAとMASTERならほとんど使える。日系のカードは使えない店もあるので、VISAかMASTERのどちらかをもっていると安心。
治安
一般的には非常によい。深夜に女性がひとりで歩いていても、ほとんどの場合、無事である。ただしエリアによっては、注意が必要な地域もある。シンガポールにも売買春の認められた地域、あるいは実質的にそれらが行われている地域などがあるが、それらの地域では注意が必要である。また闇タバコの販売、ニセブランド品の販売を路上で見かけることもあるし、カラオケやなどで女性の接待があるところもあるが、違法であるので注意したい。また薬物関係は、シンガポールでは厳禁されており、万が一の場合には死刑になるので(厳格な法運用により国際問題に発展することもある)、絶対に関わるべきでない。
注意すべき休日
チャイニーズ・ニューイヤー(春節)の時期に渡航する時は注意が必要である。官公庁、大学、企業など、ほとんどが約1週間から2週間程度、通常のように機能しなくなる。春節前後には多くの企業が休業となり、春節当日からは身近なスーパーなども閉まってしまうことも多いので、事前にある程度の食料品は買い込んでおく方が安心である。また、春節にオープンハウス等で華人系の家族を訪問する場合には、オレンジ(現地ではなぜかこれを「オレンジジュース」と呼ぶ)を2つ、お祝いに持っていくので、予定のある人は、春節で店が閉まってしまう前に買いだめしておくとよい。
3.医療情報
インドネシアなどの隣国から、緊急の際に搬送されてくるほど、医療事情はかなりよい。日本人医師がシンガポール国内に常駐し(治療行為が認められた日本人医師が常駐)、日系クリニックもある。日本人医師がいなくても、日本語ができるスタッフのサポートのある病院もあり、緊急時の英語に心もとない人でも安心して治療が受けられる。
ただしシンガポールの医療制度は、基本的に日本と異なる。General Practitioner(G.P、一般総合医)とSpecialist(専門医)とに分かれていて、最初はG.Pのクリニックにかかり、その後、G.Pの判断に従って専門医の紹介を受け、その治療を受ける(紹介なしでも専門医を直接受診することはできる)。また自由診療制のため、医療費は医師ごと、クリニックごとに異なる。
病院は公立病院と私立病院があるが、公立病院は安価でも、設備やサービスで私立病院ほどの設備がない、待ち時間が長いという欠点があり、外国人はほとんど私立病院で治療を受ける。したがって医療費は高額になりやすい。海外旅行保険をかけている人は、キャッシュレスで受診できる病院に行くと安心。
なお、私立病院はOpen Systemになっており、各専門医は私立病院の施設にテナントとして入ってクリニックを開業するというシステムになっている。したがって、支払いは病院設備費、薬代等を病院に、診察料、治療費は担当医に払うなど、支払先が複数になる。
- 代表的なクリニック:
日本人会診療所 The Japanese Association Clinic, Singapore
Japan Green Clinic
Raffles Japanese Clinic (Raffles Hospital内)
Nippon Medical Care (Gleneagles Hospital内) - 専門医のいる病院、入院設備のある総合病院:
Mt. Elizameth Hospital
Gleneagles Hospital
Raffles Hospital
薬
一般薬は、Guardian、Watsonsなどの薬局やドラッグ・ストア、7-11などのコンビニエンス・ストア、スーパーなどでも簡単に手に入る。日本で使い慣れた薬も多く、規模の大きなドラッグ・ストアでは薬剤師が相談にも乗ってくれるので、入手に困ることはない。シンガポール国内で、かなり辺鄙なところ(ウビン島、クス島などの島嶼部、広大な墓地の真ん中、工業団地の真ん中など)に行かない限り、薬が手に入らないことはない。
中医について
脈診から診断を行い、薬を処方してくれる中医もかなり広く見られる。特に華人系の寺廟では慈善事業として無料診療をしているところも多い。処方される薬は伝統薬である。基本的には体質なども関係するので、長期で滞在するのでないかぎり、帰国後の治療の継続を考えると、普通の病院へ行っておくほうがよいと思う。
4.通信環境
ホテルなど:
ある程度のレベル以上のホテルであれば、部屋でもロビーでも、無料のWifiサービスがある。
安価なビジネスホテルなどは基本的に無料のサービスはなく、有料のWifiチケットを購入することが多い。24時間で10ドルのチケットと、それよりは安いが利用時間が短いものの2種類がある。いずれも最初に接続したら、接続を切っていてもカウントダウンし続けるため、接続をいちいち切断してしまわずに、チケットを使い切ってしまう方がよい。
バジェット・ホテル(ドミトリーなど)では、ロビーで無料のWifiが使い放題であることが多い。
街中の無料Wifiスポットについて:
チャンギ空港は、フリー・インターネット・アクセスのサービスをしており、何もしなくてもPCやスマートフォンなどでチャンギ空港のフリーWifiを選べば、そのまま使える。また空港内にも無料の端末があちらこちらにあり、自由に理由できる。
街中では、Wireless@SGというネットワークが展開しており、比較的広範な地域で無料のWifiホットスポットを探して利用できる。ユーザー登録が必要だが、一度登録してしまえば、どこでも使えるので便利である。マクドナルドやスターバックス、主要なショッピング・コンプレックス、国立図書館などでの利用が可能。ただし、一度に同じIDでネットワーク接続できるのはひとつのデバイスのみで、同時にPCとスマートフォンをつなぐなどの利用はできないほか、速度も日本のADSL程度しかない。トラフィックの混雑状況によっては、ネットワークに接続したものの実質的に使えないこともあるので、多くの人が利用している場所では使えないことも多いかもしれない。
携帯電話のプリペイドSIMカードとデータ通信について:
SIMロックフリーの端末(ルーター、スマートフォン、タブレット等)さえ持っていれば、実は各携帯オペレータから発売されているプリペイドSIMを買うのが一番てっとり早くて、便利である。
シンガポールのオペレータは、Singtel、M1、StarHubの3社。それぞれプリペイドSIMを販売しているが、そのSIMは通話ができるタイプと、データ通信専用のものとがある。通話をしたい場合には、通常の3GのSIMカードを購入し、各社それぞれに提供されているData Packs(1日、3日、7日、30日などのプランがある)を利用すれば、安価にデータ通信も可能。データ通信専用のものは、下りの通信速度が早いので、ストレスなく使える。
SIMカードの有効期限はいずれも最後のTop upから180日間、値段はSIMの種類と有効期間によって異なるが、15ドルぐらいから購入可能。スマートフォンでなくてもよく、SIMロックフリーの3G携帯電話の購入を考えているならば、それぞれのオペレータが端末つきの安いセットを販売している。
SIMカードの残高は、オンラインでTop upが可能だが、7-11などのコンビニでのTop up、Top upカードを購入してのTop upも可能。
5.ビザ、調査許可
観光、研究、商用など、シンガポール国内で報酬を受け取らない形での滞在の場合、3か月以内はビザが不要。入国時には空路で入国すると30日、陸路で入国すると14~30日の滞在が認められる。それ以上の滞在にはシンガポール移民局での延長手続きが必要になる。
延長にはパスポートのほか、延長理由を述べた移民局あてのレター(受け入れ機関のヘッダー付の用紙に書かれたもので、保証人のID番号が必要)、移民局の指定するフォームの提出が必要。ただし、短期の研究滞在の場合、手続きの煩雑さを省くために、一度、ジョホール・バルへ出国し、ふたたび30日間の滞在許可をもらって滞在することも多い。ジョホール・バルまではMRTやバスなどで、市内から30~1時間で到着する。なお6か月以上の妊婦には短期滞在であってもビザ(Social Visit Pass)が必要。
長期で滞在する場合、大学院生などであれば、学生ビザを取得、研究員として給料を支給されるなら、それぞれ対応するビザ(就労ビザには収入に応じていくつか種類がある)を取得する必要がある。
現実的には、大学の学部、大学院、研究所などに留学生として滞在する場合(学生ビザでの滞在)と、知人などを通じて学術研究機関を紹介してもらい、そこに無償の客員研究員として所属(大学の図書館を教員資格で使えることが多い)、スポンサーレターをもらってSocial Visit passを申請、延長する場合が多いように思う。Social Visit Passの利用者には、3か月ごとに近隣諸国へ調査旅行をかねて出国し、面倒な再延長手続きの手間を省く研究者もいた。また研究員として雇用され、報酬を得て6か月以上滞在する場合、報酬に対する所得税が発生し、いろいろと手続きが変わるため、6か月が研究所等でのひとつの受け入れの単位となっている。
なお、ビザは電子申請提出(SAVE)システムでの申請となり、申請業務は正規ビザ代理店か旅行会社に委託しなくてはならない。
6.カウンターパート、来日経験のある研究者
カウンターパートについて:
カウンターパートとしては、シンガポールの3つの国立大学、シンガポール国立大学、南洋理工大学(Nanyang Technologucal University)、シンガポールマネージメント大学をあげることができる。シンガポール国立大学にはアジア研究所(ARI)、東南アジア研究所(ISEAS)などの研究所、人文社会科学大学院・研究所、リー・クワンユー公共政策大学院があり、これらが研究、フィールドワークの受け入れ機関となっているほか、人文社会科学部(社会学科、中国文化研究科などが受け入れ先となっていることが多い)、あるいは受け入れ先を紹介してくれる教員の所属する学部などが、カウンターパートとなってくれることが多い。南洋理工大学にも社会科学、人文科学系の学部や研究所があるので、こちらに所属する学生、研究者もいる。
いずれの場合も、通常は知人の紹介でカウンターパートを探すことが多い。知人ネットワークを通じて、自分の受け入れ先として適当な先生を紹介してもらい、その人を紹介責任者として、その人の学部、あるいは関係機関に受け入れてもらうことになる。公募も、シンガポール政府の若手研究者公募プログラム(National Research Foundation (NRF)フェローシップ等)など、ないこともないが、情報を得ることが難しい。多くはこうした公募情報すら知人を介した紹介で知ることが多い。
また大学以外では、国立図書館などで、プロジェクト型のフェローシップや研究員を募集していることがあり、国立図書館をカウンターパートとして研究調査を行うことも可能である。同様に、私立学校やポリテクニックなど、自分の研究調査フィールドにマッチした学校に知人がいれば、その学校や機関をカウンターパートとして滞在することも可能である。
来日経験のある研究者:
学術交流が盛んなため、かなり多く、ここでは紹介しきれない。それぞれ、自分の関連分野を少し探ってみるだけで、日本と学術交流のある研究者は多いはずである。
なおシンガポール国立大学は日本の多くの大学と様々なレベルで提携を結んでいる(東京大学、京都大学、九州大学、東北大学、大阪大学、東京工業大学、東京外国語大学、慶應義塾大学、早稲田大学、関西学院大学、立命館大学、立教大学、一橋大学等)。
7.大学図書館、アーカイブス、本屋
大学図書館:
シンガポール国立大学も、南洋工科大学も、ビジターとしての利用が可能である。それぞれ事前申し込みが必要で、e-mailで申請後、訪問する形となる。
シンガポール国立大学では、1週間~2週間程度ならTemporary Reader's Permit(TRP)を申請する。これに限っては事前申し込みをしなくても申請が可能。入口のインフォメーション・カウンターで申請できる。TRPはe-resoucesへのアクセス、RBR(授業の参考書などに指定されており、スタッフと生徒が時間制限付きで利用できる本)の利用、本の貸出は不可。1か月以上滞在し、大学のスタッフとしての資格が得られない場合には、Personal External Membershipを申請することも可能。こちらは事前申請が必要である。貸出が可能なタイプと、アクセス・オンリーの2種類があるが、いずれも有料。どのタイプに申請して許可を得るべきかはケース・バイ・ケースの対応となるため、まずは事前に問い合わせたほうがよい。なお、閉架扱いとなっている一部書籍や学位論文は、キャンパスからかなり離れた書庫に保管されるようになったため、Loan Deskで請求してから届くまで、約2時間、あるいはそれ以上待つ必要がある。時間に余裕をもって利用するほうがよい。
シンガポール国立大学中央図書館
( http://libportal.nus.edu.sg/frontend/web/about-nus-libraries/membership )
Associate University Librarian
Loans and Membership Services
住所:
Central Library, National University of Singapore
12 Kent Ridge Crescent
Singapore 119275
電話:6872-1595 or 6872-0236
メールアドレス:membership@nus.edu.sg
南洋工科大学では、1週間有効のビジター・パスを申請する。こちらもオンラインでの申請となり、利用日の2営業日までには申請しておく必要がある。利用権限についてはケース・バイ・ケースであるため、事前に相談してみるとよい。
南洋工科大学
Lee Wee Nam Library (Visitor Pass Request)
Nanyang Technological University
住所:Nanyang Avenue, Singapore 639798
電話:6790-4691
メールアドレス:circulation@ntu.edu.sg
国立図書館( http://www.nl.sg ):
シンガポールの国立図書館は各地の地域図書館と中央図書館の連携を強化し、ネットワーク利用を可能とするLibrary2000政策のもと、かなりの発展を遂げた。過去の新聞など、多くはデジタル・データベース化され、シンガポール国民と永住許可書保有者は、遠隔利用が可能である。短期滞在者は、直接訪問して利用する。
ビクトリア・ストリートには、16階建ての図書館がそびえたっているが、その7階から13階が閲覧専用のLee Kong Chain Reference Libraryである。地下1階は地域図書館扱いになっており(貸出可能、イベント・スペースあり)、3階から6階は劇場となっている。研究書、史料、資料等が多いのは閲覧専用のLee Kong Chain Reference Libraryである。利用にあたって登録の必要はない。ただし閲覧室に入るとき、コピー用紙の持ち込みは禁止であるので、貴重品やPCなど以外は入口のロッカーに預ける(書籍、ノート等の持ち込みは可)。
PCの持ち込みも自由で、自分の端末から資料の検索、e-resourcesの検索、その一部利用などが可能である。短期滞在者も、パスポート番号で制限つきのユーザー(e-resoucesへのフルアクセス不可、リモートコントロール(シンガポール居住者は自宅から遠隔利用できる)利用不可)に登録できる。
利用登録ができていれば、WifiでNLB Publicを選択すると、自分のPCが図書館のデータベースに接続され、各種目録にアクセスすることが可能となる。かつて(2011年8月)は学術雑誌論文などのダウンロードも自分のPCで可能であったが、2012年8月の段階では制限がきつくなっていて、現在、学術論文のダウンロードが可能かどうか不明である。なお、持ち込んだPCでインターネットにアクセスする場合には、Wifiの接続先を変更し、Wireless@SGネットワークを利用する必要がある。
居住者以外がe-resourcesをフル活用する場合には、図書館のmultimedia stationを利用する(3セント/分)。デジタル化資料、マイクロ・フィルムのプリントアウトも可(30セント/1ページ(A4))。また館内資料のコピーも可能。
National Library Board( http://www.nlb.gov.sg/ )
住所:100 Victoria Street, Singapore 188064
国立アーカイブズ( http://www.nas.gov.sg/ ):
国立アーカイブズも、国立図書館同様、国立図書館庁が管理する機関であり、Library2000政策でその利用方法が劇的に変わった機関である。利用登録は基本的に必要なく、資料検索、一部資料の利用はオンラインで可能である(シンガポール国民と永住許可書保有者は制限なしの遠隔利用が可能)。アーカイブズに設置されている検索端末は自由に利用できるが、視聴覚資料とマイクロ・フィルムはオンラインでは公開されておらず、現地を訪問して、別途、レファレンス・カウンターで請求し、閲覧室に置かれている機器(視聴覚資料閲覧用機器、マイクロ・フィルム・リーダー等)で利用する。
住所:1 Canning Rise, Singapore 179868
電話:6332-7909
Fax:6339-3583
オンライン・データベース:Singapore Access to Archives Online(a2o)
http://a2o.nas.sg/a2o/public.html
本屋:
Select books ( http://www.selectbooks.com.sg/ )
研究者の間ではよく知られた書店。オンライン書店もあるため、現在は訪問せずに、オンライン利用する人が多いかもしれないが、実店舗は2012年夏にTanglin Shopping CentreからArmenian Street、プラナカン博物館の並びに移転した。
東南アジア諸国、マレーシア、シンガポール関連の研究書が充実しているほか、店舗の奥にイベント・スペース、カフェ・スペースが設けられ、各種イベントが行われる。現在、シンガポール・ヘリテイジ・ソサエティ等がシンガポールの歴史や文化に関する研究会、レクチャー、講演などを行う際にも利用されている。
基本的には英語文献が中心で、中文文献、マレー語文献などは少ない。
住所:51, Armenian Street, Singapore 179939
電話:6337-9319
Kinokuniya(紀伊国屋)
東南アジア随一の売り場面積を誇るタカシマヤの店舗を含め、4店舗展開している。タカシマヤの店舗の品ぞろえはかなり充実しており、値段設定は高めだが、他の大規模書店で入荷していない本も多くが手に入る。英語文献だけではなく、中文文献なども入手可。
Bras Basah Complex
国立図書館に隣接する書店コンプレックス。今古、新華、友聯、青年書局など、研究者に有名な中文書店が集まっている。国立図書館が放出した古本などを売る書店もある。また2012年8月には、かつては道を挟んで存在していた長河書房がここへ移転、1階に店舗を構えている。なお、向かいの長河書房の入っていたビルは、現在、テナントが総入れ替えになりつつある。そのビルに入っている有名中文書店の草根書室は2013年2月現在、まだここにあるが、近々移転予定だとのことである。事前に移転情報をfacebookで確認しておくとよい(草根書室はfacebookにアカウントを持っている)。
シンガポール国立大学中央図書館 売店(1F):
シンガポール国立大学が出版した本、シンガポール東南アジア研究所が出版した本など、シンガポール国内で発売された本、シンガポール国立大学の研究成果本、東南アジア研究、シンガポール研究などの本が入手しやすい。なお東南アジア研究所はこの売店のほかにも、研究書内の出版局が書店実店舗を構え、展示販売を行っている。
※シンガポールの書店の移転、閉店はめまぐるしい。PageOne Bookstoreなどの面白くてかなり役に立つ書店や、英語文献に強い大きな書店チェーンがあったものの、昨年までに閉店してしまった。書店の所在については、出かける前に、事前に情報を収集したほうがよい。
8.機材・資料の持ち出し、持ち込み
基本的にフィールドワークに使用する機材・資料に禁止されるようなものは少ないと思われる。ただし、調査者の日常生活にある嗜好品、薬、本などの一部に持ち込みが禁止されるものがあるので、注意が必要である。
- 持ち込み禁止のもの:チューインガム、噛み煙草と煙草類似品(電子煙草等も含む)、銃器型ライター、向精神薬(治療のために必要な薬剤は事前に確認し、医師と相談をしておくこと)、ワシントン条約の規制対象となっている動物やその製品(試料、資料として持ち込む場合には事前に適切な申請を行うこと)、ポルノ(日本の週刊誌グラビア程度でも禁止)、
- 持ち込みに申告が必要なもの:アルコール、煙草
- 持ち込み制限のあるもの:CD、DVD、フィルムなど
持ち出しについては、外貨、現地通貨などの制限のほかは、煙草、アルコールに若干の制限があるだけで、ほとんど規制がない。
日本からシンガポールへ荷物を送る際には、EMS(シンガポール国内ではSpeed Post扱いとなる)、クロネコヤマトの国際宅急便等が利用できる。国際引っ越し便の取り扱いもあるので、長期にわたって家族で滞在するなら検討してもよいかもしれない(ただし調査研究での滞在で、無給の場合、家族ビザの申請はできないと思う)。
シンガポールから日本へ荷物を送る場合には、Singapore PostのSpeed Postが一般的ではないかと思われる。もちろん、国際宅配便、ビジネス便、カーゴなどの選択もあり、予算に応じて選択できる。Singapore Postで船便も取り扱ってはいるが、多くの場合、Speed Postを勧められる。Singapore Postでは梱包材も販売しているので、中身だけもって郵便局へ行って、郵便局員とがんばって荷造りすることも可能である。シンガポール国立大学内の郵便局は荷物の発送に手馴れており、係の人が相談に乗ってくれる。中央郵便局はPaya Lebar駅のすぐそばである。なお、シンガポールからの発想費用はかなり高いので、強者は持ち運べる分量(20㎏程度まで?)ならば、ジョホール・バルに出国し、マレーシアから発送するという。値段が半額ぐらいになると聞くが、試したことはない。
9.調査グッズの現地調達
文具はどこにいても調達可能。駅の売店、コンビニエンス・ストアなどにも文具が売られている。市内では地図とバスの路線図があると便利だが、これらも駅の売店、コンビニエンス・ストア、書店などで売られている。
PC、デジタル機器は、Funan Digitalife Mallに行けば、ほとんどがそろう。このモールは電子機器のショッピング・コンプレックスで、最上階には大手チェーン、Challengerが入店している。Challengerはシンガポール各地に支店を持ち、安さと品揃えで群を抜くが、Mall内には他店舗も多いので、比較検討して選ぶことが可能である。
- Funan Digitalife Mall
住所:Funan, Singapore 179097
最寄駅:City Hall
なお日系家電量販店のベスト電器もシンガポール展開している。
10.日本人研究者情報/これまでの調査、科研
(自然環境、歴史、政治、経済、宗教、文化など各分野で活躍する研究者など)
日本人研究者はかなり多い。以下はほんの一例にすぎない。
歴史:林博史(関東学院大学)
政治:田村慶子(北九州市立大学)、川端隆史(SMBC日興證券)
政治経済学:岩崎育夫(拓殖大学)
経済:案浦崇(松蔭大学)
社会学:鍋倉聰(滋賀大学)、橋本和孝(関東学院大学)、合田美穂(香港中文大学)
国際社会学:中村都(追手門学院大学)
国際社会学、比較文化論:奥村みさ(中京大学)
文化社会学:川崎賢一(駒澤大学)
宗教学:山下博司(東北大学)、
宗教学、文化人類学:杉井純一(駒澤大学)、岡光信子(東北大学)
文化人類学:田中雅一(京都大学)、福浦厚子(滋賀大学)
社会人類学:伊藤眞(首都大学東京)
文学:西原大輔(広島大学)
文化:安藤隆之(中京大学)、吉本光宏(ニッセイ基礎研究所)
11.そのほか、各地域情報など
シンガポールを研究調査する研究者には、シンガポール人であるか外国人であるかを問わず、社会調査的手法をとる社会学的アプローチをする人が圧倒的に多いように思われる。アンケート、インタビュー、オンライン・サーベイなどと、質的調査を併用する研究者もいないことはないが、ごくわずかであるのには、極端なプライバシー保護意識もあるといってよい。
これは実際にあったトラブルだが、単に調査のために滞在させてもらっていた知人宅で、フィールド日誌(個人的なメモ)を毎日書いていたら、その中に自分が出てくるのではないか、そしてそれが公開されるのではないかと知人が猛烈な勢いで起こり始めたことがあった。日本語も、漢字を読めないその知人は、これが私の個人的日誌であり、プライバシーを侵害することはない、あなたのプライバシーを公開することはない、といっても信用しなかったので、結局、私は自分のそれまでつけていたフィールド日誌すべてを知人に渡し、放棄せざるを得なくなった。
当然、その後、私は自分の調査活動がしにくくなったので、滞在先を変更したが、こうしたプライバシーをめぐるトラブルは起こりがちである。特に宗教、教育、社会的問題に隣接するテーマを扱っている場合には、十分配慮する必要がある。ちょっとした違法行為が私たちのなした研究成果から明るみに出てしまい、滞在許可や永住許可を取り消されるのではないか、と危惧している人々は多い。
その一方で、シンガポールで調査研究を行う場合、その調査結果の早急な公開がインフォーマントたちから求められている。研究者たちが彼らから何を学んだのかシェアしよう、という意識がある人々は、調査研究に快く応じてくれるだけでなく、最大限の協力をしてくれる。そうした要求にこたえるためには、成果は日本語ではなく、あくまでも彼らのわかる言語(英語、マンダリンなど)で公開される必要がある。英語ネイティブ、マンダリンネイティブでない研究者にとって、これはかなりのプレッシャーだが、研究者の知見のシェア=フィールドへのフィードバックの重要性とその即応性(かなり早いレスポンスが要求される)を考える時、手元に調査データをずっと保管し、分析して理論を完成させるような研究方法のみではまずいと思う。シンガポールでの調査はあらゆる点で、速さと正確さが求められる。研究成果報告の速さと正確さ、そしてそれらを蓄積したうえでの理論構築を平行して進める必要があると思う。
(2013年2月現在 伏木香織)