地域情報アーカイブ Area Information

フィールドワーカーから寄せられた地域別の現地情報です(2010-2015年頃)

トルクメニスタン

1.外務省ホームページ 各国・地域情勢

トルクメニスタン: http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/turkmenistan/index.html

2.旅行情報(空港、ホテル、換金/TC、治安など)

空港及び航空事情

 国際空港は首都アシガバットに一港しかなく、トルクメニスタン航空以外の国際線はトルコ航空(イスタンブール:1日1-2便)、シベリア航空(モスクワ:週2便)、ルフトハンザ・ドイツ航空(バクー経由フランクフルト:週3便)、ウルムチ(中国南方航空:週3便)、ウズベキスタン航空(週1便)に限られており、極めてアクセスが悪い。トルクメニスタン航空は、モスクワ、サンクトペテルブルグ、ミンスク、キエフ、アルマティ、バンコク、北京、アムリットサル、デリー、アブダビ、ドバイ、イスタンブール、フランクフルト、ロンドン、バーミンガムの各都市と直行便があるが、日本国内で航空券の購入は不可で、外国人料金が存在する。

 国内線が就航する空港は、アシガバット以外にマルィ、トルクメナバット、バルカナバット、トルクメンバシ、ダショグズの5空港があるが、基本的にはアシガバットをハブにしており、地方都市間の運行はトルクメンバシ=ダショグズ、バルカナバット=ダショグズ、マルィ=ダショグズ間のみ。国内線の航空運賃は鉄道並みに安い。

ホテル事情

 アシガバット市内のホテルは様々なランクのものがあるが、サービス水準と比較すると高額な感は否めない。最も高額だが内装が豪華なプレジデント・ホテルでシングル1泊180米ドル、アシガバット・ホテルやトルクメニスタン・ホテルなど市内中心部の中級ホテルでシングル1泊50米ドル程度。石油ガス展示会など、大規模な国際展示会開催時は政府機関がホテルの空室を差し押さえてしまい、予約不可な場合が多く、宿泊料金も跳ね上がる。

換金/TCなど

 通貨はトルクメニスタン・マナト。公定レートは1米ドル=2.85マナト(固定レート)。市内の両替所では米ドルでの両替が基本。例外的に、国立対外経済活動銀行ではユーロや日本円との両替も可能。公定レートは1円=0.031804マナト(固定レート)。右銀行ではVISAカードによるキャッシング(5%コミッション)及びアメリカンエクスプレスのトラベラーズ・チェック(3%コミッション)の換金が可能。

治安

 治安は他の中央アジア諸国と比較すると格段によい。これは逆に言うと、市民が常に治安当局の統制下にあることを意味している。同時に、地方を中心に麻薬が蔓延しているとされている。外国人は夜中の11時以降市内を出歩かないほうがよいと言われている。

(地田徹朗)

3.医療情報

 アシガバット市内には数多くの医療施設が存在するが、外国人が頻繁に利用するのは「中央病院(別名:トルコ病院)」のみ。基本的な設備(エックス線、エコー、心電図など)は整っているが、診察能力は決して高くない。重病が疑われる場合、国外で診察を受けることが妥当。

(地田徹朗)

4.通信環境

インターネット

 ホテルでは「プレジデント」ホテルでのみ有料で利用可(ダイアルアップ)、「ラチン」ホテルなど、ビジネスセンターで利用できるホテルもある。市内各所にインターネットカフェがあるが、どこも満員の状態。アク・アルティン・ホテルにオフィスを構える当地米国大使館の広報文化センターでは一般市民にインターネットを無料開放しており、外国人も利用可能。携帯電話会社のMTSがUSB形式の携帯通信端末を販売しており、これでパソコンに繋ぐことでインターネット利用可能。ただし、通信速度は極めて遅い。旧ソ連圏でポピュラーなインターネットカードは存在しない。なお、閲覧できるサイトには制限がかかっている(反政府系サイト等は閲覧できない)。

携帯電話

 携帯電話のSIMカードは市内で購入可能。国営企業の「アルティン・アスィル(黄金の世紀)」社とロシア系のMTSの2社がある。外国人料金が存在する。

5.ビザ、調査許可

 トルクメニスタンは、世界的に見ても査証取得が極めて困難な国の一つである。調査目的であれば、カウンターパートよりの招待状に基づく業務査証での入国が望ましいが、取得は極めて困難。観光査証では移動の自由が確保されない。通過査証だと3日間という滞在期間の制約がある。

 当国科学アカデミーは、古代・中世史や科学技術を中心に国際会議を頻繁に開催しており、まずはその機会を利用してトルクメニスタンに入国し、今後の研究協力に関する話し合いを行うことが最も確実な手段である。なお、その際は、国際会議の実施期間プラス数日分の査証が発給されるため、その時間に個別の面談を行うことは可能。トルクメニスタン科学アカデミー(http://science.gov.tm/)に国際会議の情報が掲載されている。

6.カウンターパート、来日経験のある研究者

 当地研究機関でカウンターパートを見つけるのは非常に困難。前述の国際会議のオケージョンを除いて個人で当国の研究機関にアプローチすることは難しく、大概の場合において在トルクメニスタン日本国大使館よりの口上書をもって当国外務省経由で依頼するよう求められることになる。しかし、大使館が個人研究者のために便宜を図るためには、外務省経由で正規の「便宜供与依頼」を受領していることが望ましく、それがない場合の便宜供与は難しい。

 人文科学でのカウンターパートとして可能性のある研究所として、科学アカデミー考古学・民族学研究所、科学アカデミー手稿研究所(主に17-19世紀のアラビア文字で書かれたトルクメン史に関する手稿資料を所蔵)が挙げられる。自然科学については、水利科学について水利省国立水利科学・生産・設計研究所「トルクメンスヴルィムタスラマ」、環境科学や沙漠研究について自然保護省国立砂漠・植物相・動物相研究所、地震学について科学アカデミー地震学研究所などが挙げられる。
 
 これまで日本とトルクメニスタンとの間の学術交流は少なく、来日経験のある研究者は少ない(筆者が知る限りでは、ババエフ前砂漠・植物相・動物相研究所長が2002年に国連大学招待で来日している)。しかし、2009年12月にベルディムハメドフ大統領が訪日した際、随行団には科学アカデミーの総裁も含まれており、日本との学術交流の活性化に関心があることは確かである。日本でも知識の集積が遅れている国であり、今後の学術交流の進展に期待したい。

(地田徹朗)

7.大学図書館、アーカイブス、本屋

図書館

 国立図書館がアシガバット市南部のベルゼンギ地区にあるが、外国人が利用するためには、日本大使館よりの外務省宛口上書に基づいて文化省の許可が必要であり、手続きに1ヵ月以上を要する。大使館に許可通知が届いた後、写真2枚とパスポートを持って図書館にて登録手続きを行う。独立後に出版文化が崩壊したこともあり、所蔵文献は多くなく、ソ連時代の文献については散逸したものも目立つ。コピーは1枚20テンゲ(100テンゲ=1マナト)と格安だが、コピー機が壊れている日も多い。最上階にあるニヤゾフ前大統領の著書である「ルフナマ(魂の書)」ホールはある種の見物。
 
 その他、科学アカデミー付属中央学術図書館も存在するが、筆者は利用したことがない。恐らくは、国立図書館と同じような手続きで利用許可申請をする必要があるのだろうが、詳しいことは不明。

アーカイブス

 アーカイブスとしては、国立公文書館(ゴスアルヒーフ)をまず挙げることができるが、外国人が利用できるのかどうかは不明。年一回、「トルクメン・アルヒウィ」という雑誌を刊行しており、公文書館で入手可能。
 
 アラビア文字で書かれた手稿古文書については、前述の科学アカデミー手稿研究所に豊富に所蔵されている。一般市民や外国人の利用に対しても開放しているようだが、利用方法については不明(恐らくは、大使館→外務省経由で許可を得ねばならない)。「ミラス」という歴史学雑誌(英語・露語・トルクメン語)を年4回刊行している。

本屋

 国営書店が市内に数件あるが、最も大きいものはトルクメンバシ大通り沿いの市内中心部にある「ミラス」。出版文化が崩壊しており、出版の自由が存在しないため、販売している書籍は大統領の著作集やアルバムが中心。古書コーナーもあり、こちらのほうがむしろ貴重である。
 
 ソ連時代の古書は、テケ・バザール東側で青空古書店が営業。また、市内最北部のタルクーチカ・バザールにも古書販売コーナーがあり、時として掘り出し物も見つかる。

(地田徹朗)

8.機材・資料の持ち出し、持ち込み

 パソコン等機材の持ち込み・持ち出しについてはそれほど厳しくなく、昨今は、一般旅券保持者でも問題なく税関を通過している。しかし、書籍や資料についてはその限りではなく、税関での開封検査があった場合、没収の対象になる可能性もある。よって、スキャンしてファイルとして取り込んでおくなど、対策が必要。郵便についても、送付時に内容確認があるため、やはり資料を送る手段としては適切でない。

(地田徹朗)

9.調査グッズの現地調達

 パソコン関連品(プリンター、スキャナー)については現地での調達可能であるが、それ以外の実験・調査機材については日本より持参したほうがよい。

(地田徹朗)

10.日本人研究者情報/これまでの調査、科研

入澤崇(龍谷大学): 考古学、仏教研究
岡田晃枝(東京大学): 中央アジア地域情勢、国際関係論、トルクメニスタン政治・外交
佐々木良昭(東京財団): 中東地域情勢、トルクメニスタン政治
瀧知也(東京大学): トルクメン音楽研究
地田徹朗(東京大学・院): ソ連史における中央アジア、中央アジア地域研究、地理学史
古幡哲也(JOGMEC): ユーラシア・エネルギー情勢(トルクメニスタンを含む)
輪島実樹(ロシアNIS貿易会): ユーラシア・エネルギー情勢(トルクメニスタンを含む)
など

11.そのほか、各地域情報など

 国外への出国以外の目的での国境地域の入境には移民局によるパーミットの取得が必要。入境目的を記したレターを招聘機関が移民局に提出必要あり。可能であれば、招待状発給時に同時に申請しておくことが望ましい。

 トルクメニスタンでは3労働日以上滞在する場合には移民局への滞在登録申請が必要。また、居住地を変更する場合にも3労働日以内に招聘機関による滞在登録変更が必要。これを怠ると、法外な罰金の対象になるため注意が必要。

 現状では、政治学や経済学の研究目的のためにトルクメニスタンに入国すること、トルクメニスタンに留学することは極めて困難であるため、外務省の専門調査員制度を利用し、在トルクメニスタン日本国大使館で研究業務に従事するのも一つの選択肢である。

(地田徹朗)

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