地域情報アーカイブ Area Information

フィールドワーカーから寄せられた地域別の現地情報です(2010-2015年頃)

カタール

1.外務省ホームページ 各国・地域情勢

カタール: http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/quatar/index.html

2.旅行情報(空港、ホテル、換金/TC、治安など)

空港

 ドーハ国際空港がカタールの表玄関。2011年にすぐ近くに新ドーハ国際空港が完成し、全業務を移管する予定。カタール航空ないしはカタール航空と他の航空会社のコードシェア便を利用して、カタールを出入国することになる。日本からは、カタール航空が成田-関空-ドーハ便を毎日1便飛ばしている。アジア・中東ないしは欧州の主要なハブ空港経由でも出入国ができる。(2010年4月現在、福島康博)

ホテル

 総じて言えることは、カタールはホテルの数が少なく料金も高めである。欧米資本の名の知れたホテルチェーンは、おおむねドーハ市内に進出しているものの、安くても2-3万円台。1万円台やそれ以下のホテルは、数が少ない。これらのホテルのクオリティーは、それぞれ日本の同じ金額のホテルと遜色がない。
 
 近年、各種の国際会議・見本市・スポーツ大会などの開催が増えており、その時期は予約を入れることも困難。また、日本の旅行業者はカタールのホテルへの予約業務を嫌がる(私の経験では数社から断られた)ので、自分でファックスなり直接電話をかけて申し込んだ方が確実。2022年のサッカー・ワールドカップ開催に向けて、今後ホテルの数が増えると思われる。

(2010年12月現在、福島康博)

換金/TC

 原則、現地通貨のQR(カタール・リヤル)のみ流通。QR1=約25円。ホテルなど、ごく一部でのみ米ドルの使用が可能。(2010年3月現在、福島康博)

換金: 空港、ホテル、銀行、ショッピング街などの両替商で両替が可能。日本円の両替は可能だがレートが悪い。米ドルかユーロを事前に準備しておいた方が無難。また、近隣諸国や南・東南アジアの通貨の両替もできる(出稼ぎ労働者が多いため)。(2010年2月現在、福島康博)

銀行: 休みは金曜日。それ以外は、7時30分から11時30分までと午前中しか営業していないため注意が必要。(2010年2月現在、福島康博)

TC: ホテルや銀行、両替商で換金できると思われるが、街中での買い物はほとんどできないと思われる。詳細は未確認。(2010年1月現在、福島康博)

治安

 政治・経済・社会が安定しているため、クーデター(1995年にハマド現首長が無血クーデターを行って以来、発生していない)、テロ、デモ等に巻き込まれる可能性は低い。ただし、カタール国内には米軍が駐留しており、反米感情が高まったときには問題が発生することも予想されるので、最新情報には注意が必要。(2010年1月現在、福島康博)

 スリ、強盗、置き引きなどの犯罪に対する注意が必要なのは、他の国と同様。個人的な経験の範囲内でいえば、夜に人通りの少ない場所を男が一人で歩いていても、怖い思いをすることはなかった。(2010年2月現在、福島康博)

 街中での写真撮影は、比較的自由である。もちろん、官公庁や軍・警察関係、石油・天然ガス施設、首長一族の施設に対して注意が必要なのは、他の中東諸国と同じ。もっとも、そばにいる軍人や警察官、警備員らに対し、事前に一声かけておけば、余計なトラブルを生むリスクは減る。(2010年2月現在、福島康博)

3.医療情報

気候

 国土の大部分が砂漠で時期を問わず暑いが、ドーハ市内は海に面しているため、海風の影響で体感気温は砂漠地域ほどではない。このような自然環境であるため、日中出歩く際には、日射病と熱射病予防のための日差しと暑さの対策が必須となる。逆に、建物内はクーラーが効きすぎるくらい効いているので、袖の長い服も必要となる。また、2月ごろには何日か雨が降ることもあるので、雨に濡れて体調を崩さないように注意すべき。 (2010年2月現在、福島康博)

風土病・感染症

 他の砂漠の国と同様これといった風土病・感染症はなく、事前に予防注射を受ける義務はない。野良犬は、少なくとも都市部にはまずいないので、狂犬病の心配はいらない。蚊に刺されることもあまりなかった。(2010年2月現在、福島康博)

医療施設

 詳細は未確認だが、日本語による診察は期待できないと思われる。(2010年2月現在、福島康博)

4.通信環境

インターネット

 ホテルによっては、部屋で持参したパソコンを用いたり、ビジネスセンターで備え付けのパソコンを通じての利用が可能。インターネットカフェは、近年増えているという話も聞くが、まだ数が少ない。(2010年2月現在、福島康博)

携帯電話

 2007年2月の訪問時においては、NTT DoCoMoの携帯電話は、ローミングが未対応であった。同社のホームページ(http://area.worldwing.nttdocomo.co.jp/search/index.php?procType=showSearchResult&kval=%8A%BF%8E%9A&keyword=%83J%83%5E%81%5B%83%8B&x=17&y=6)によると、現在は対応している模様。(2010年2月現在、福島康博)

5.ビザ、調査許可

ビザ

 一般的なのは入国ビザで、有効期限28日以内のものがQR100。ホテルの宿泊の予約証明や、カウンターパートによる招聘状などは必要としない。ドーハ国際空港ですぐ取得が可能。ただし、支払いはクレジット・カードによる。その他に商用ビザがあるが、在外大使館で取得する必要がある。詳細については、在米カタール大使館公式サイト(http://www.qatarembassy.net/visa.asp)およびカタール政府のポータルサイトであるHukoomi(http://www.gov.qa/wps/portal/)を参照のこと。(2010年4月現在、福島康博)

調査許可

 制度の詳細は未確認。(2010年1月現在、福島康博)

6.カウンターパート、来日経験のある研究者

詳細は未確認(2010年2月現在、福島康博)

7.大学図書館、アーカイブス、本屋

大学

 近年、カタールは大学教育に力を入れており、国内十数大学の半数以上は、欧米の大学の分校である。各大学はそれぞれ図書館を併設していると思われる。ただ、最古の大学であるUniversity of Qatarでさえ30数年の歴史しかなく、大学自体の歴史が浅いため、蔵書はそれほど充実していないと思われる。詳細は未確認。(2010年1月現在、福島康博)

アーカイブス

 未確認(2010年1月現在、福島康博)

本屋

 大きなショッピング街には一般向けの大型書店がある。また、街中には小さな書店が点在しているが、研究者向けの専門書店は見受けられなかった。(2010年1月現在、福島康博)

8.機材・資料の持ち出し、持ち込み

電化製品関連の諸情報

電圧:240V、周波数:50Hz、コンセントの形:BF、カラー映像方式:PAL、DVDのリージョンコード:2(日本と同じ)。(2010年2月現在、福島康博)

物流

郵便: 郵便業務を担うのはQ-POST。手紙や封筒、小包などを扱っている。郵便局は、全国各地にある(リスト)。なお、カタールに郵便物を送る場合は、相手先の住所ではなく私書箱番号(P. O. Box No.)を記載することになる。料金等詳細については、Q-POSTの公式サイト(http://www.qpost.com.qa/)を参照。(2010年2月現在、福島康博)

DHL: DHL(http://www.dhl.com/wrd/office/qa.html)のオフィスがドーハ市内にあり、利用が可能。 (2010年2月現在、福島康博)

持ち出し、持ち込み

 現地調達が見込めない特殊な計測機器や測定装置は、日本から持ち込まざるをえないだろう。また、天然資源や動植物のサンプル、美術品や考古学上の出土品などは、研究者としては持ち出したくなるところだ。しかしながら持ち出し・持ち込みには、何らかの規制がかかっていると考えるのが自然である。これらの点について調べたものの、詳細はよくわからなかった。(2010年2月現在、福島康博)

9.調査グッズの現地調達

 ドーハ市内にあるショッピングモールCity Center Doha(CCD)にカルフールが入店しており、品揃えは日本のカルフールと遜色がない。そのため、寝袋からパソコンまで一通りのものはここで揃えることができる。CCDや他のショッピングモールには、多くのテナントが入っているので、値段さえ気にしなければ物資調達には困ることはないだろう。ただ、特殊な測定機器などについては、やはり日本から持ち込んだ方が無難。ただし、持ち込み規制の詳細については未確認。(2010年3月現在、福島康博)

10.日本人研究者情報/これまでの調査、科研

総論

 カタールに関連した研究を行っている研究者は、非常に少ない。その中でも、主な研究テーマとしては、石油や天然ガスを中心とした経済・産業構造・金融についての研究、アルジャジーラを対象としたメディア研究などが中心である。しかしながらこれらの研究では、その多くはカタールに特化せずGCC諸国の中の一国として扱っていたり、あるいはメディア・言語・教育研究の一調査対象として扱っている場合がほとんどである。カタール固有の事象に根付いた研究、とりわけ人類学・社会学・政治学的な研究は、ほとんど行われていないのが実情である。インド人やフィリピン人の出稼ぎ労働者が多いので、国際的な労働移動に関する研究対象地としては、「穴場」ではなかろうか。(2010年2月現在、福島康博)

 このような状況の中、カタールを含めたGCC諸国について積極的に発言・執筆を行っているのが、前田高行氏である。氏のブログであるアラビア半島定点観測 - 半島各国の社会経済及び支配王家に関する動向分析(http://ocin-japan.blog.drecom.jp/)は、この地域・分野の最新情報・分析を知るのに有益である。(2010年2月現在、福島康博)

データベース検索

 日本中東学会が運営する論文データベース日本における中東研究文献データベース1989-2010検索(http://wwwsoc.nii.ac.jp/james/database/database.html)にてカタールを検索すると、25件がヒットする。(2010年2月現在、福島康博)

日本中東学会での報告

 日本中東学会の年次大会(http://wwwsoc.nii.ac.jp/james/meetings/annual.html)にて、2001年から2009年にかけてカタールに関連した研究報告は、2004年の湾岸諸国の金融に研究に関する研究、2006年のアルジャジーラを題材としたアラビア語に関する研究、2008年の湾岸諸国の高等教育に関する研究の3件である。 (2010年2月現在、福島康博)

11.そのほか、各地域情報など

国内の移動手段

 国土が秋田県ほどの広さしかないため、鉄道はなく、また飛行機の国内便もない。主要な公共の移動手段は、タクシーかバスとなる。(2010年2月現在、福島康博)

 タクシーは、主要施設のタクシースタンドから乗り込むか、流しを拾うことになる。安価なメーター制のもの(初乗りQR2)と、ドイツ車などを使用した高価な交渉制の2種類が存在。ただしタクシーの台数がそれほど多くないため、ドーハ市外に向かったはいいものの、現地でタクシーが拾えずに帰ってこれなくなる可能性がある。市外に向かう場合は、あらかじめチャーターしておくか、タクシー会社の電話番号を控えておいた方が無難。(2010年2月現在、福島康博)

 バスは、ドーハ市内外を巡回する路線が複数存在する。本数はそれほどないものの、行き先がバス停の近くならば、タクシーよりも安上がりである。乗客は、建設現場等で働く外国人労働者かバックパッカーがほとんど。車内は清潔で、怖い思いをすることはない。(2010年2月現在、福島康博)

 バスとタクシーを運営するMowasalat社のホームページ(http://eng.mowasalat.com/)。非常に重く、また音楽が流れるので注意。(2010年2月現在、福島康博)

住所の表記について

 カタールで調査を行う場合、もっとも厄介な問題が「住所」である。カタールには、日本の「○丁目番地」やイギリスの「○○ストリート×番」といったような住所が存在しない。ドーハ市内に関しては、「△△地区」という表記はあるものの、地図には地区名が書いていないことが多い。
 
 郵便物は、それぞれ私書箱をもっているので確実に届くのだが(ただし、宅配は原則やっていない。自分で郵便局に取りに行くか、別料金を払って宅配を行ってもらう)、現地まで足を運ぶとなると、その場所を探すのが困難である。例えば企業調査の場合、資料やホームページに「B-Ring Road沿い」とだけ書かれていても、B-Ring Road自体が数kmもあるため、目的地を探すのに一苦労する。事前にアポイントが取れるのであれば、「行き方」をよく確認しておいた方がよい。(2010年2月現在、福島康博)

食事について

 スターバックス、マクドナルド、KFC、ピザハットといった欧米資本のファストフード・チェーンがのきなみ進出しているため、とりあえず食うに困ることはないものの、値段は日本並み。同じく欧米資本の高級ホテルに行けば、本格的な西洋料理や和食が味わえる。安く上げるのであれば、南・東南アジア出身の出稼ぎ労働者が集まる地区に、安食堂が軒を連ねている。衛生状態も悪くはない。意外にも、手頃ないわゆる「アラブ料理」の店が見当たらないのが、残念である。(2010年2月現在、福島康博)

飲酒について

 欧米資本の高級ホテルにある高級レストランならば、問題なく飲酒はできるが、街中の安食堂での飲酒は不可能。アルコールの購入は、Qatar Distribution Centreでのみ購入が可能。ただし、購入にはライセンスが必要。ライセンスを取得するには、居住許可証やカタール国内の勤め先企業が発行する所得証明書等が必要になるため、一介の旅行者にはライセンス取得は無理である。(2010年2月現在、福島康博)

言語について

 公用語はアラビア語。企業や官公庁、ホテルや大型店などでは英語も通じる。また、官公庁の資料や統計データの多くは、アラビア語と英語の両方で公開されている。他方、国外からの出稼ぎ労働者によっては、アラビア語・英語ともに解さず出身国の母語のみを話す者も多いという印象を受けた。調査対象(者)によってどの言語を使用すべきか、工夫した方がよい。(2010年2月現在、福島康博)

研究以外での日本との関係

 カタールは、日本ではあまり知名度がない国である。そこで、ローカルの人たちや在留邦人との間で話題になりそうなトピックを集めてみた。

 日本とカタールとの関係においてもっとも有名な出来事は、1993年10月28日のサッカー・ワールドカップのアジア予選における日本vs.イラク戦であろう。「ドーハの悲劇」として知られるこの試合は、ドーハのアルアリ・スタジアム(Al-Ahly Stadium)で行われた。
 
 「中東のCNN」ことアル・ジャジーラは、カタールに本部を置く国際的なテレビ局である。日本国内において最も簡単な視聴方法は、youtubeにて開設されている公式チャンネル(http://www.youtube.com/user/AlJazeeraEnglish)にアクセスすることである。

 ハマド首長の息子で、皇位継承順位第1位のタミーム皇太子(Tamim bin Hamad Al Thani)はスポーツ好きで知られており、IOCの委員を務めている。この関係で、来日経験もある。なお、2022年サッカー・ワールドカップ招致委員会委員長を務めたモハマド王子は、タミーム皇太子の同母弟にあたる。

 ドーハ日本人学校は、2001年にいったん閉校したが、2009年4月に再開した。

 ローカルの富裕層の間では、鷹狩りを趣味とする者がいる。鷹狩り用の鷹を取引するファルコン・マーケットが定期的に開かれ、数十万円~数千万円で売買されている。高価でよく訓練された鷹を所有していることが、ステータス・シンボルになっている。日本の鷹狩り・鷹匠関連の団体とも交流がもたれている。

(2010年12月現在、福島康博)

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