地域情報アーカイブ Area Information

フィールドワーカーから寄せられた地域別の現地情報です(2010-2015年頃)

アルメニア

1.外務省ホームページ 各国・地域情勢

アルメニア共和国: http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/armenia/index.html

2.旅行情報(空港、ホテル、換金/TC、治安など)

基本情報

正式国名: アルメニア共和国(Հայաստանի Հանրապետություն / Republic of Armenia)
首都: エレヴァン
政体: 共和制
国家元首: Serzh Sargsyan大統領(2012年2月現在)
人口 約300万人
言語 アルメニア語が公用語だがロシア語も広く通用する。
通貨 ドラム(AMD)。2013年2月現在、1JPY=4.3AMD
宗教 アルメニア使徒教会信徒が大多数だが、マイノリティとしてロシア正教会、アッシリア教会、ヤズィーディーの信徒も。
国番号 374
時間帯 UTC+4。時差は日本より−5時間。

  • 日本からアルメニアへの直行便はないので、日本の主要空港からエレヴァンまではヨーロッパの都市で乗り継ぐ必要がある。モスクワ経由(アエロフロート航空)もしくはウィーン経由(オーストリア航空)が利用しやすい。なおモスクワ経由の場合、往路のモスクワでの乗り継ぎ時間がかなり長くなる。
  • エレヴァンのズヴァルトノツ空港から市内までは乗り合いミニバス(マルシュルートカ)かタクシーを利用することになる。乗り合いミニバスは空港正面を出て右手の駐車場に待機しているが、運行は昼間のみ(市内まで250AMD)。なおタクシーだと3000〜4000AMDが相場。乗る前にドライバーと要交渉。タクシーは空港正面に多数待機している。なお、逆に市内から空港へ行く場合、無線タクシーを利用すれば定額制で2000AMD。
  • 市内交通にはタクシー、地下鉄、バス、トロリーバス、乗り合いミニバスがある。タクシーは初乗り5kmまで500〜600AMD。公共交通機関は市内であれば、料金は1回100AMDと安価だが、地下鉄以外は常に混んでいて利用しにくい。
  • ホテルは市内中心部に多数。ほとんどの客室でWi-Fiによるインターネットを利用可能。ホステル形式の安宿も最近は増えてきており、一泊4000AMD〜で宿泊可能(安宿でもWi-Fiを備えているところが多い)。
  • 日本でアルメニアの現地通貨であるドラムへの両替はできない。ドルもしくはユーロの現金を持ち込みアルメニア国内で現地通貨に両替するのが一般的。ちなみにアルメニアのスーパーマーケットの多くは両替カウンターを備えているので滞在者には利用しやすい(24時間営業のところが多い)。また、国際キャッシュカードも多くのATMで利用可能(三井住友銀行、新生銀行のカードは確認済み)。なおCitibankのカードはなぜか使用できるATMが少ないので要注意。アルメニアにおいてT/Cの両替は一般的ではないが、Travelexの海外専用プリペイドカードは国際キャッシュカード同様に多くのATMで利用可能。
  • 治安は旧ソ連諸国の中でも特に良好な部類に入るが、最低限の注意は必要。

3.医療情報

 公立の医療機関は設備が古いため、外国人は私立の医療機関に行くことが多い。なお診察の際に保険の有無を聞かれ、保険を使う場合は診察料金が2倍になる。外国人にも利用しやすい病院として以下があるが、医師で英語を話す者は少ない。

Nairi Medical Center
住所:21 Paronyan st.
HP: http://www.nairimed.am/

  • 薬局は町中の至る所にあるので、大抵の薬は簡単に入手可能。24時間営業の店も中心部にいくつか存在。

4.通信環境

携帯電話

 携帯電話会社はBeeline、Vivacell-MTS、Orangeなど複数存在し、プリペード式が一般的。市内にある各社のオフィスでSIMカードを簡単に購入可能(1000AMD程度)。通話料金は市内各所にある自動支払い端末か各社のオフィスで前払いする。通常の通話に加え、スマートフォンであれば3G回線でインターネットに接続可能。手続きもパスポートを持参するだけでいいので、現地の受け入れ先などと連絡をとる必要がある場合は有効。 

インターネット

 短期滞在でホテルに宿泊する場合、ロビーや客室内でWi-Fi経由でインターネットに接続できることが多い。長期滞在でアパートなどに居住する場合、個人でインターネット・プロバイダーと契約する必要がある。
 
 インターネット・サービスを提供している会社はBeeline、Orange、Ucomなど。外国人が契約する場合、レジデンス・カードが必要なことが多い。レジデンス・カードがない場合は現地の知人名義で契約してもらう方法もある。契約後にUSB方式のデータ通信端末が貸し出される。使用料は月極めで月末に市内各所にある自動支払い端末か各社のオフィスで支払う。料金は通信速度によるが、6000AMD/月から使用可能。

5.ビザ、調査許可

 空港または国境で21日〜3ヶ月のビザを簡単に取得できる(ビザ取得料金は21日で3000AMD)。なお、長期滞在の場合、大学や受け入れ先研究機関を通してレジデンス・カードの取得が可能(正規の学生として登録する場合、料金は無料)。その場合も観光ビザで入国し、現地でレジデンス・カードに切り替えることになる。

6.カウンターパート、来日経験のある研究者

レヴォン・アブラハミアン(Levon Abrahamyan)教授
(アルメニア科学アカデミー考古学・人類学研究所)
アルメニア現代人類学の大家。北海道大学スラブ研究センターに客員研究員として滞在経験有り。アルメニア語に加え英語、ロシア語に堪能。

アルツヴィ・バフチニアン(Artsvi Bakhchinyan)氏
(アルメニア科学アカデミー歴史学研究所研究員)
文化研究者、映画・バレエ批評家。在外アルメニア人コミュニティの歴史についての論考も。シンポジウムでの発表で来日経験有り。

7.大学図書館、アーカイブス、本屋

研究者が利用する図書館、アーカイブスとして以下を挙げる。

  • アルメニア国立図書館(National Library of Armenia / Հայաստանի ազգայն գրադարան)
    住所:72 Teryan st.
    電話:(010)-56-60-19または56-35-33
    URL:http://www.nla.am
     アルメニア最大の図書館。一般書、学術書に加え、国外のアルメニア人コミュニティ発行のものを含む新聞・雑誌も充実している。アルメニアの図書館全般に言えることだが、独立以降に出版されたものについては納本が徹底されていないため所蔵されていないことも多い。
     1階入り口を入って左手にレフェレンス・カウンターがあるので、そちらで希望資料を予約し、約30分後に4階の閲覧室で閲覧可能となる。なお資料の取り置きは1ヶ月可能だが館外持ち出しは不可。閲覧室内ではWi-Fiも利用可能。資料のコピーは4階にあるコピー・カウンターで可能。スキャンは不可。月〜日、毎日開館。(月〜金は20:00まで/土は19:00まで/日は17:00まで)。利用登録にはパスポート、写真1枚が必要で、利用証は即日発行される。地下鉄Yeritasardakan駅下車。
  • アルメニア国立科学アカデミー基礎学術図書館(The Fundamental Scientific Library of the National Academy of Sciences of the Republic of Armenia / ՀՀ Գիտությունների ազգային ակադեմիայի հիմնարար գիտական գրադարան)
    住所:24d Baghramyan ave.
    電話:(010)-56-44-81-1
    URL:http://www.flib.sci.am
     同国第2の蔵書量を誇り学術書が充実。利用手順は国立図書館と同様。アカデミー本館(バグラミアン通り)の左手奥の建物の入り口を入り階段を昇った2階のレファレンス・カウンターで資料を予約する(平日16:00まで。それ以降に予約すると翌日の閲覧になってしまう)。利用登録にはパスポート、写真1枚が必要で、利用証は即日発行される。地下鉄Marshal Baghramyan駅下車。
     なお、アカデミーの各研究所はそれぞれ個別の図書館を有しており、各専門分野に関する書籍・雑誌を所蔵している。閲覧には各研究所の所長らの許可が必要だが、閲覧できるかどうかはコネや人脈による。
  • マシュトツ記念古文書研究所(マテナダラン)(the Mesrop Mashtots Institute of Ancient Manuscripts (Matenadaran) / Մեսրոպ Մաշտոցի անվան հին ձեռագրերի ինստիտուտ (Մատենադարան))
    住所:53 Mashtots ave.
    電話:(010)-56-25-78
    URL:http://www.matenadaran.am/
     世界有数の古文書館。キリスト教関係をはじめとする写本、古文書の他、19世紀までの各地のアルメニア人コミュニティの定期刊行物なども所蔵されている。アルヒーフは右手奥の建物に入っている(アルヒーフの建物は正面の博物館の建物とは異なるので注意)。
     利用手続きには所属先研究機関・大学からの紹介状もしくは館長宛請願書、写真1、パスポートが必要。入り口にいる警察官に用件を告げて入館する。建物3階の館長秘書のAni女史の元に行き用件を告げれば、館長のHrachya T’amrazyan氏を紹介してもらえる(女史の手助けでその場で請願書を書くことも可能)。手続きから2〜3日で利用書が発行される。4階が閲覧室。
  • アルメニア国立文書館(National Archives of Armenia / Հայաստանի ազգային արխիվ)
    住所:5, Hr. Kochar st.
    電話番号:(010)-22-53-55
    URL:http://www.armarchives.am/
     1923年創立。1828年のロシア帝国による東アルメニア併合以降、ロシア帝国期からソヴェト・アルメニア期を経て現代までの公文書が所蔵されている。また、17世紀以降のエチミズィンのカトリコス座関係の文書も所蔵されている。
     利用手続きには所属先研究機関・大学等からの紹介状もしくは館長宛請願書、パスポートが必要。入り口にいる警察官に用件を告げて入館する。入り口を入って右手の「市民受付(Քաղաքացիների ընդունելություն / K’aghak’ats’ineri ĕndunelut’yun)」室(10:00〜16:00)で利用手続き。2〜3日後に利用許可が出る。なお、国立アルヒーフにはバグラミアン通りに別館があり、そこにはソ連共産党中央委員会や独立以降の政党関係のフォンドが所蔵されている。閲覧室にはPC持ち込み可。コピー・サービス有り。デジタルカメラで史料を撮影することも可能とのこと。地下鉄Barekamut’yun駅下車。
     ※ 国立アルヒーフについてはやや情報が古いものの塩谷哲史氏の訪問記がある(塩谷哲史「アルメニア国立文書館訪問記」『日本中央アジア学会報 第4号』2008年、25〜28頁)。
    学術書が充実している書店を以下に挙げる。
  • Noyan Tapan
    エレヴァン最大の書店で学術書も充実している。
    住所:Republic Square, 2nd Governmental Building
    電話:(010)-52-79-57
  • Bukinist Bookstore (Book World)
    小規模だが学術書が充実している。
    住所:20 Mashtots ave.
    電話:(010)-53-74-13
  • Artbridge Bookstore and Caf
    カフェに書籍コーナーが併設されている。芸術書が中心だが学術書も一部有り。西洋語書籍も置いてある。
    住所:20 Abovian st.
    電話:(010)-52-12-39
    URL:http://artbridge.am/
  • Bureaucrat
    芸術書中心の書店で画廊が併設されている。学術書も一部有り。西洋語書籍も置いてある。
    住所:19 Saryan st.
    電話:(010)-50-01-52
    URL: http://www.bureaucrat.am/

 古本は地下鉄Yeritasardakan駅近くのアボヴィアン通り(スーパーマーケットのSASが目印)の地下街の古本市で探すのが便利。その他には毎週末に共和国広場(Հանրապետության հրապարակ / Republic Square)近くのヴェルニサジュ(Վերնիսաժ / Vernisazh)と呼ばれるエリアで開催される青空市にも古本コーナーがある。古書店はマテナダラン下のマシュトツ通りにある Karen氏の店が利用しやすい。

8.機材・資料の持ち出し、持ち込み

 アルメニアから日本へ荷物を送る場合、船便が選択できないため送料は高額になってしまう。本の場合、一番安い発送方法は普通郵便。料金は1kgで3700AMD、5kgで17000AMD。それ以上になると値段が高くなるので、5kgずつ小分けして送ると良い。追跡サービスを付けると1100AMD割り増し。なおEMSなどは非常に高い。

 なおアルメニアの法律では出版から50年以上経過した書物の国外持ち出しは禁止。郵便局から発送する場合は梱包の際にチャックされる可能性があるので(郵便局員がその場で中身を確認しながら梱包する旧ソ連式システム)、持ち出したい場合は手荷物として飛行機に持ち込んだ方が確実。持ち込みに特に制限はない。

9.調査グッズの現地調達

 エレヴァン市内で文具等は簡単に購入可能。

 ノートパソコンやデジタルカメラ、プリンター/スキャナーなどの電化製品なども市内の電気店で売られているが、種類が少なくやや高額。アルメニアでは家庭用プリンターがあまり普及していないため、プリンターのインクは機種によっては入手が難しいものもあるので、大量に印刷する場合は日本から持ち込んだ方が良い。

 ちなみにエレヴァン市内にコピー店が多数あり、料金も7〜8AMD/1枚と手頃。なおスキャンのサービスはあまり見られない。

10.日本人研究者情報/これまでの調査、科研

自然環境、歴史、政治、経済、宗教、文化など各分野で活躍する研究者など

  • 建築学
    篠野志郎氏(東京工業大学)…アルメニア教会建築史を専門とする。
  • 考古学
    有村誠氏(金沢大学)…アルメニアを中心にコーカサスの先史時代を専門とする。
  • 歴史学
    北川誠一氏(東北大学名誉教授)…モンゴル時代のカフカースと近代の北カフカースを専門とする。
    吉村貴之氏(東京外国語大学)…ソヴェト・アルメニア期を中心にアルメニア近現代史を専門とする。
    渡辺大作(本稿執筆者、東京大学大学院総合文化研究科博士課程)…現代アルメニア人在外コミュニティのアイデンティティに関する問題に関心を持ち、現在はイランのアルメニア人コミュニティを中心に研究。

11.そのほか、各地域情報など

 国立国会図書館リサーチ・ナビの「アルメニア」の項…アルメニアの図書館、博物館、大学・研究機関などへのリンク多数。
URL: http://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/link-arm09.php

(2013年2月現在 渡辺大作)

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