地域情報アーカイブ Area Information

フィールドワーカーから寄せられた地域別の現地情報です(2010-2015年頃)

エジプト

1.外務省ホームページ 各国・地域情勢

エジプト・アラブ共和国: http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/egypt/index.html

2.旅行情報(空港、ホテル、換金/TC、治安など)

航空券

 エジプト行きの航空券を購入する場合、大きく分けて二つの選択肢がある。
 
 一つは、成田と関空から週2、3便出ているエジプト航空の直行便を利用するというもの。行きは約14時間、帰りは約12時間。かつて古い機体だった頃は、これが、気が遠くなるほど長い時間に感じられたものだが、数年前に新機体が導入され、シートが良くなり、映画や音楽など個人向けの機内エンターティンメントが始まったことから、今ではかなり快適な旅が期待できる。
 
 もう一つは、経由便を利用するというもの。かつてはヨーロッパ経由が一般的だったが、近年では湾岸諸国経由のものの方が、料金も手頃で、サービスも比較的良く、機体も新しいため人気がある。ドバイ経由のエミレーツ航空や、アブダビ経由のエティハド、ドーハ経由のカタール航空などが知られている。これらを利用した場合は、経由先空港での待ち合わせ時間によって、日本からカイロまで18時間から30時間と所要時間に幅が出る。

空港、ビザの取得、両替

 エジプトには、カイロの他、アレキサンドリア、ルクソール、ハルガダ、シャルム・シャイフなどに国際空港がある。通常の旅客が到着するカイロ国際空港は、カイロ中心部から北東に約15kmの位置にある。 

 航空機から降り、カイロ国際空港内に足を踏み入れると、入国審査カウンターの手前に銀行ブースがいくつか並んでいる。日本人であれば、ここで1ヶ月間有効の観光ビザを15USドルで取得することが可能。その際、例えば一万円札を出して「ビザ・プリーズ」などと言うと、ビザ印紙と、ビザ代金を差し引いた金額をエジプトポンドに両替して返してくる。

 ただし、近年、外国人によるビザ取得の規制が強まっていて、2011年にも一度空港での観光ビザ取得を取りやめる決定が下されたことがあった。観光省や観光業界からの強い反対により決定は「停止」されたが、今後も変化があるかもしれないので注意すること。

 本格的な両替については、最近のカイロでは、街中に店を構える両替商や銀行窓口、ホテルのフロントなどで、日本円からエジプトポンドへの両替が可能である。レートは日々変動し、店舗によっても異なる。店先にレートを掲示する店舗が多いので、いくつか確認してみるとよいだろう。

ホテル

 市内に多い安宿は予約なしで受け入れてくれるところも多いが、日本にいるうちから、『地球の歩き方』などのガイドブックに記されているホテルのウェブサイトやメールアドレスに連絡して、あるいはbooking.comなどの検索サイトを通して、あらかじめ予約をしておく方が安心である。空港への送迎サービスを実施しているホテルも多いので、予約と同時にサービスの有無と金額についても確認しておくとよい。 

 空港への送迎をホテルに頼んだ場合、相場は100ポンド程度のようである(1ポンド=14円、2013年2月現在)。送迎を頼まずとも、空港内でタクシーの運転手やリムジンの斡旋会社からいろいろな声がかかるはずである。そうしたタクシーを用いれば、より安くカイロ市内へと移動することができる。ただ、そのための交渉は、長旅に疲れた身にはなかなか大変である。

 ホテルの場所は、滞在中の訪問先や予定によって決めるとよいだろう。例えば、歴史研究者がよく用いる国立図書館に通うのであればタハリール広場近辺やザマーレク(ナイルの中州)の7月26日通り近くなどが便利である。地下鉄を利用するなら、駅のあるタハリール広場近辺やドッキ(ナイルの西岸)の宿がお勧めである。

交通

 メトロ(地下鉄)は、距離に関係なく一回の乗車で1ポンドを支払う。窓口でチケットを購入する。 

 その他の市内の移動は、バスも多く走っているが、行き先や停留所がわかりにくいため、タクシーを使うことが多いだろう。タクシーは、カイロであれば白と黒、アレキサンドリアであれば黄色と黒など、町によって塗装の色が異なる。こうした従来型のタクシーは長年使われたものも多く、状態は様々である。料金は距離に応じたおおよその目安が知られており、それに従って払う。乗車・下車の前後に「交渉」が発生することもある。

 一方、近年導入されたメーター付きのタクシー(白や黄色)は、比較的こぎれいである。この場合、初乗りは2.5ポンドで、到着時のメーターに応じて料金を支払う。中には、メーターをリセットしないまま走り出す運転手や、メーターに細工をしている運転手もいる。後者の場合、(通常の0.5ポンド単位や1.5ポンド単位ではなく)不規則な形で数字が上がっていく場合が多い。おかしいと思ったら早めに文句を言うか、降りてしまった方がいい。
 尚、メーターの料金設定は、近年のインフレと必ずしも連動しているわけではないため、表示通りの金額を支払っただけでは不満な顔をする運転手も少なくない。エジプトには「チップ」の習慣があるので、少し遠くまで乗ったとき、安全な運転であったときなど、チップという気持ちで少し上乗せすると、気持ちよく移動ができるだろう。

治安

 観光大国であるエジプトは、外国人旅行者の安全確保を謳い、主要な観光地には観光警察や治安部隊を配備していたことから、治安状況はかなりよいと言われてきた。 
 しかし、2011年の「革命」以降(2013年2月現在に至るまで)、(1) 民衆による抗議行動や諸勢力同士の衝突が断続的に起こっていること、(2) 警察や軍の統制力が以前に比べて弱まっていること、そして、(3) 国民の生活や不満が解消されていないことなどから、治安が不安定となっており、滞在には、相応の注意を要する。

 一般に、デモやその他集まりに関する情報を常に収集し、そうした場には無用に近づかないことをお勧めする。それ以外の場所では、普段どおりの生活が営まれていることが多い。

 また、とくに女性訪問者は性的な嫌がらせにも注意したい。現地に滞在する日本人女性の間でも、痴漢等の被害に遭った経験のある人は多い。タクシーに乗るときは運転手から離れた位置に座る、混んだバスやメトロには乗らない(後者には女性専用車両があるのでこれを利用する)、お祭りなどの人ごみには行かないなど、日頃から注意しておくとよい。
 男性と一緒に、あるいは集団で行動するときには被害に遭いにくいが、人ごみでは効果がないことも多いのでやはり注意する必要がある。また、エジプトには、外国人の服装や振る舞いに対して寛容な人が多いが、ムスリムが多数派を占めるその他の国々に滞在する場合と同じく、女性はあまり肌を露出しない服装を心がけた方が無難である。

その他

 カイロでの生活に関する情報源として重宝するのが、カイロ・アメリカ大学出版の情報ガイドブック『Cairo: The Practical Guide』と市内の地図本『Cairo Practical Maps』である。とくに地図本は、通り名の索引がついていることから、カイロ市内での移動に役立つ。いずれも、カイロ・アメリカ大学の書籍部(タハリール広場の旧校舎内やザマーレクの宿舎に併置されている)や、大きめの書店で購入することが可能。

3.医療情報

予防接種

 入国に必要な予防接種はとくに指定されていない。 

 日本の外務省は、エジプトに赴任する人に対して、A型肝炎、B型肝炎、破傷風等の予防接種を勧めている。予防接種はカイロ市内のモハンディシーン地区にある予防接種センター(Vaccination center、http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/africa/egypt.html ) でも受けることができる。狂犬病の被害も報告されているので、野外で犬や猫に嚙まれたりした場合には、医療機関に相談するとよい。

薬局

 薬局(現地語では「サイダレイヤ」)は市内の至る所にある。「アスクレピオスの杖」として知られる、蛇が巻きついた杖の絵が薬局のシンボルマークである。薬局には薬剤師が勤務することも多く、薬についての簡単な相談に乗ってくれる。筆者の経験では、「ものもらい」のように目が腫れたときに近くの薬局の薬剤師に相談し、そこで勧められた目薬を購入したことがある(それを使用した後、無事症状は改善した)。 

クリニック・病院

 医療機関は、とくに都市部では数は多く、充実している。カイロのことであれば、上述のガイドブック『Cairo: The Practical Guide』に医療機関が専門分野ごとにリストアップされていて、参考になる。筆者も、同書を見て歯科医院を探し、電話予約をして治療を受けたことがある。しかし結局、近い方が楽という理由で、住んでいたアパートの近くにある歯科医に通うようになった。医療機関の看板には、医師の名前や得意分野が書いてあるので、選ぶ際の目安となる。

 英語が通じる大病院もいくつかある。筆者の場合、ドッキ地区にあるミスル・インターナショナル・ホスピタルに日帰り入院したことがあるが、医師は流暢な英語を話し、物腰も柔らかく、看護師たちも大変感じがよかった。個室に入ったが、部屋やベッドは清潔で、何も不満を感じなかった。会計システムもわかりやすく、明瞭であったように覚えている。

 ただ、治療の種類にもよるが、医療費は日本の保険外診療と同じくらいかかる。先述の入院時には、当時筆者は国民健康保険に加入していたので、海外での急な怪我や病気への医療費の一部を補填するという「海外療養費」の申請を行うことにした。これには、診療内容明細書や領収書、領収明細書など、現地でしか入手し得ない書類の提出が必要なので、あらかじめどのような書類を取得すべきかを調べておくとよいだろう。もちろん、海外旅行保険等にも加入しておいた方が無難である。

4.通信環境

携帯電話(現地語では「モバイール」)

 エジプトの携帯電話は、基本的にSIMロックのない機体が売られていて、それに現地の携帯電話会社のSIMカードを挿入して使用する。機体はヨーロッパや他の中東諸国でも使用できる。エジプトではmobinil、vodafone, etisalatという三社が携帯電話サービスを行っているが、携帯電話の使い始めには、各会社の支店等で正式に手続きすることをお勧めしたい。

 電話をかけるためには、あらかじめ入金する必要がある。入金方法は二つで、一つはプリペイドカードを購入し、その指示に従ってコードを打ち込むという方法である。カードは携帯電話会社の支店や契約店の他、キオスクや小売店などで購入することが可能。もう一つは、支店か契約店で現金を支払い、システムを通じて入金するという方法である。

 携帯電話から国際通話が可能である。また、当然のことながら日本からの電話やスカイプ等のインターネット電話からの通話も受けられる。 

ネット環境

 インターネットカフェもあるが、通常のカフェでWi-Fiサービスを行っているところも多い。セキュリティがかかっている場合には、店の人にセキュリティコードを尋ねればよい。料金の有無は店舗によって異なる。

5.ビザ、調査許可

ビザ

 入国時には上記の観光ビザ(1ヶ月間有効)を取得し、後に、主要都市にあるパスポート・オフィスに赴き、必要に応じて延長申請(3ヶ月~1年)をしたり、学生ビザへ切り替えたりする人が多い。カイロの場合、タハリール広場に面する政府合同庁舎「モガンマア」の二階に行く。専用の申請用紙に記入し、パスポートのコピー(顔写真のあるページと入国ビザのあるページ)と証明写真、印紙を添えて窓口に提出する。 

 延長の場合、その場にいる警察官が簡単な聞き取りを行い、延長期間を決める。状況によるが、受け取りまで数日から1週間くらいかる。再入国ビザは別途申請が必要(近年仕組みが変わり、出国時の航空券の提示や滞在予定が求められることもあるようだ)。

調査許可

 外国人研究者が調査許可を得るのは非常に困難だといわれている。そのため、多くの場合、現地の大学や研究機関と共同で調査を行っている。その場合でも受け入れ先となる研究機関を探し、ネットワークを作り、情報を集める必要がある。

6.カウンターパート、来日経験のある研究者

7.大学図書館、アーカイブス、本屋

 カイロの図書館や研究所については、日本学術振興会カイロ研究連絡センターのウェブサイトに載せられた情報が参考になる(エジプト情報→エジプト研究ガイド→カイロ研究ガイド、http://jspscairo.com/egyptinfo/library.htm) 
 
 また、カイロの書店情報については、『カイロ書店案内』(日本学術振興会カイロ研究連絡センター、2004)が詳しい。同書は、ザマーレクの7月26日通りから入ってすぐのところにある日本学術振興会カイロ研究連絡センターで参照することができる。また、同じ情報は、東京大学東洋文化研究所付属、東洋学研究情報センターのウェブサイト内にあるアジア研究情報Gateway(書店ガイド→カイロ)からも閲覧することができる。
http://ricas.ioc.u-tokyo.ac.jp/asj/index.html

8.機材・資料の持ち出し、持ち込み

 機材・資料の持ち出しや持ち込みは、問題にならない場合が多い。
 航空機の規定重量を大幅に超える量の書籍を購入した場合には、郵送が必要となるが、量と資金によって、①特定の業者に郵送を委託する場合と、②郵便局から日本に送る場合がある。

 ①は、通称「アナカン」と呼ばれるもので、正式には「unaccompanied baggage(別送手荷物)」という。貨物として扱われるため、手荷物よりも安い金額で荷物を載せることができる。「別送」の名称どおり、当人が航空機で移動することが前提になっているため、航空券が必要である。
 空港に直接持ち込み手続きすることもできるが、筆者がこれまで利用したことがあるのは、Gatewayという民間業者である。その場合、民間業者が自宅まで来てくれて、本や荷物を梱包し、そのまま持っていってくれる。日本の空港で受け取るか、提携する運送会社によって自宅まで運ぶようにすることもできる。値は張るが、体力の消耗はない。

 ②では、ラムセス中央鉄道駅に隣接するラムセス駅郵便局の「国外輸出貨物(Export Foreign Parcels Office)」の窓口に行く。2013年1月末に日本へ書籍を送った場合では、以下の手続きが必要であった。
 まず日本に荷物を送りたいことを申し出て、内容物の確認を受ける。その後用紙を渡され、係の人が一箱20kg以下に分けて箱詰めする。2013年1月現在では、船便(bahari)仕様にして、1キロ38ポンド+手数料が80ポンド、20キロの場合、合計料金は850ポンドとなった。領収書には追跡用の番号が記載されており、インターネット上で確認することができる。約2週間後、日本の郵便局によって自宅に直接届けられた。

9.調査グッズの現地調達

 調査に必要な機材(カメラやパソコン、録音機器など)は、現地の専門店で購入することができる。大型スーパーやショッピングモールに専門店が入っている他、モハンデシーン(スフィンクス広場)のコンピューターモールやタハリール近くの一角に専門店が多数集まる場所がある。
 
 尚、エジプトは日本と異なり、電源プラグの型がB3あるいはCと呼ばれる丸型の2ピンで、電圧は220ボルト。

10.日本人研究者情報/これまでの調査、科研

 地質学や考古学、歴史学、人類学、宗教学、現代研究などを含め、エジプトをフィールドとする/エジプトで学んだことのある日本人研究者は数多い。

 このうち、筆者の関心に近い「歴史学、人類学、宗教学、現代研究」についていえば、最近刊行された『現代エジプトを知るための60章』(鈴木恵美編、明石書店、2012年)に、多くの若手研究者らがそれぞれの関心に応じたエッセイを寄稿している。

 ここまで何度か触れてきたが、エジプトのカイロには、日本学術振興会カイロ研究連絡センターと呼ばれるものがある(http://jspscairo.com/)。ここに、必要に応じて研究者情報や研究機関情報について相談するとよいかもしれない。また、同センターは、エジプトに関する様々な専門家を講演者とする「懇話会」も定期的に行っている。こちらもカイロに行った際には覗いてみることをお勧めしたい。

11.そのほか、各地域情報など

エジプトに関するリンク集

http://www.ide.go.jp/Japanese/Links/North_africa/egypt.html (アジア経済研究所HP)
http://www.eg.emb-japan.go.jp/j/link/index.htm (在エジプト日本大使館HP)
                                                       (2013年2月現在 後藤絵美)

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