フィールドワーカーから寄せられた地域別の現地情報です(2010-2015年頃)
アラブ首長国連邦
1.外務省ホームページ 各国・地域情勢
アラブ首長国連邦: http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/uae/index.html
2.旅行情報(空港、ホテル、換金/TC、治安など)
・日本からUAEへは、直行便が就航している。エミレーツ航空(成田―ドバイ、関空―ドバイ。2013年6月から羽田―ドバイ直行便が就航予定)やエティハド航空(成田―アブダビ、名古屋―[北京経由]―アブダビ)の利用が一般的である。このほか、キャセイパシフィック航空(香港経由)やカタール航空(ドーハ経由)も利用可能である。
・入国後、空港からの移動はタクシーやバス、ドバイでは地下鉄の利用が可能。タクシーはすべてメーター制。またドバイ国際空港では、女性運転手が女性客だけを乗せる「ピンクタクシー」の利用もできる。
・ホテルは各首長国で利用可能。観光・ビジネス目的での利用者も多いため、客室数は増加傾向にある。ただし、アブダビやドバイは科研等で「指定都市」扱いになっていることからもわかるように、全体的に宿泊料金は高い。格安~中級クラスのホテルは、ドバイであればデイラ地区に集中している。
・現地通貨(UAEディルハム)は、日本ではごく一部の銀行でしか取扱いがないため、空港や現地両替商で両替を行う必要がある。また、クレジットカードや国際キャッシュカードは現地銀行のATMから引き出すことができるため、便利である。TCについては両替商で換金することはできるが、あまり一般的ではない。
・治安は良好。女性の一人歩きも日中であれば問題ない。ただし、深夜に女性が暴行される事件なども発生しているので、事前に日本大使館・領事館の安全情報などを確認すること。
・UAEの休日(週末)は金曜日と土曜日。ショッピングモールやスーパー、小売店などは金曜午前に閉店している場合が多い。
3.医療情報
・UAEを訪れるにあたり、予防接種等は必要ない。
・外国人向けの私立病院はアブダビやドバイに多い。欧米や日本とそん色のない治療を受けることができる。
・街中やショッピングモールには薬局があるので、市販薬も入手しやすい。
・詳細については、在アラブ首長国連日本国大使館(アブダビ)医務室のページに詳しい( http://www.uae.emb-japan.go.jp/medical_j.htm )。
4.通信環境
・携帯電話(本体)とSIMカードは、現地で入手可能。SIMカード購入時にはパスポートの提示が求められる。購入後、3時間程度で開通する。現在、国営EtisalatとDuの2社のSIMが使われている。日本国内で使用している携帯電話も、海外ローミングサービスを使うと通常通り使うことができる。
・従来スカイプなどインターネット経由の通話は公式に認められていなかったが、最近は特定業者の提供によるサービスが利用可能になった。
・インターネット環境は整備されている。中級以上のホテルであれば、たいていWi-Fiや有線LANを利用できる。インターネットカフェも街中にある。国内から特定サイトの閲覧はできない。
5.ビザ、調査許可
・短期滞在(観光・商用)目的での入国には、ビザは不要。30日間の滞在が可能であり、内務省帰化居住局でさらに30日間の延長が可能。
・研究・調査用ビザの存在については未確認。
<筆者の場合>長期滞在者は、現地の大学や研究機関に籍を置いている。この場合、大学等をビザのスポンサーとする場合が多い。短期調査については、観光ビザで入国している海外研究者が多い(堀拔)。
・「アラブの春」をめぐる一連の動向で、UAEは外国人研究者の入国を注視している。2013年2月には、英国LSE在籍(当時)の湾岸研究者が学術会議で報告のために入国しようとしたところ、入国を拒否された。UAEやGCC体制の批判に関心が払われている。
6.カウンターパート、来日経験のある研究者
・UAEの学術機関には、国立大学ではUAE大学、ザーイド大学、高等技術工科大学(HCT)などがあり、私立大学では仏ソルボンヌ大学アブダビ校、シャルジャ・アメリカン大学などがある。その他、アブダビには国立公文書館、エミレーツ戦略調査研究所(ECSSR)などの学術機関がある。ECSSRは人文社会科学関係の出版活動が盛んである。ドバイに拠点を置いていた有名なシンクタンクであるガルフ・リサーチ・センター(GRC)は、2011年に当局から業務許可が更新されず、事実上撤退した。
・2007年にUAE大学のファーティマ・サーイグ教授(歴史学)が国際シンポジウム(科研費「シーア派諸社会の特質とネットワークを考察するための総合研究」の招聘)で来日している。
7.大学図書館、アーカイブス、本屋
図書館
- UAE大学中央図書館(アル=アイン):UAE関係の研究書や各種地元紙のアーカイブが所蔵されている。男女で利用時間が異なるため、事前に確認されたい( http://www.library.uaeu.ac.ae/en/LibraryHours.aspx )。
- ECSSR連邦図書館(アブダビ):UAE・湾岸関係の研究書(英語・アラビア語)の他、社会学系の図書・雑誌類、新聞等が充実( http://www.ecssr.ac.ae/ECSSR/appmanager/portal/ecssr?_nfpb=true&lang=en&_event=intr&_pageLabel=FederationLibraryPage&_nfls=false )。
- 連邦国民評議会図書館(アブダビ):学術図書の他、官報や議会資料、行政文書などが充実。
- 国立公文書館(アブダビ):政府文書や史料の収集・整理・出版を行っている( http://www.cdr.gov.ae/ncdr/English/index.aspx )。
本屋
・アブダビやドバイ、シャルジャなど各地に書店がある。UAE国内最大の書店はドバイ・モールにある紀伊國屋書店で、アラビア語・英語・日本語の書籍(学術書を含む)がそろっている。このほかのショッピングモールにも、チェーン系列の本屋がある。書店情報については、やや古い情報であるが拙論「湾岸アラブ諸国書店案内:アラブ首長国連邦・カタル・バハレーン編」『イスラーム世界研究』1(2): 464-471(2007年)も参照されたい。
ドバイ: 上述の紀伊國屋書店の他、サトワ・ラウンドアバウト近くにDar al Hikma(電話04-2683853)がある。UAE関係のアラビア語の学術書も豊富にある。また、Dubai Library Distributors( http://www.dubailibrary.com/home.php )がドバイ市内の他、アル=アインやラアス・アル=ハイマでも営業している。
アブダビ: All Prints Bookshopが有名。また、ミーナー・モールには湾岸系書店チェーンのJarir Bookstoreがある。
シャルジャ: 法律や宗教関係の店が比較的多く集まっている。
8.機材・資料の持ち出し、持ち込み
・機材や資料の持ち出し、持ち込みについては、特に制限されていない。
・UAEから日本に書籍等を送る場合は、郵便局からSAL便で送るのが便利。ダンボールは郵便局でも購入可能。1~2週間程度で到着する。
9.調査グッズの現地調達
・各地に電化製品の店やショッピングモールがあるので、カメラやPC、周辺機器などを購入することは問題なくできる。また、文具等についても、上述の本屋などでそろう。
・地図は英語・アラビア語の両方が現地書店で購入可能。もっとも一般的な地図は、Explorerが発行している地図。
10.日本人研究者情報/これまでの調査、科研
自然環境、歴史、政治、経済、宗教、文化など各分野で活躍する研究者など
- 研究者
・佐々木達夫(金沢大学名誉教授)
専門は歴史考古学。UAEの各地で遺跡調査を実施し、陶磁器に関する論文多数。
・大野元裕(衆議院議員・中東調査会上席研究員)
元在日本国アブダビ大使館専門調査員。専門は中東政治で、UAEの政治史や部族等に関する論文がある。
・細井長(國學院大學)
専門は中東地域経済・国際経済学。ドバイの経済戦略などの研究。
・佐藤尚平(日本学術振興会特別研究員)
専門は国際関係論・歴史学。英国の中東撤退と湾岸首長国の国家形成などに関する研究。
・堀拔功二(日本エネルギー経済研究所)
専門は中東地域研究。UAEの政治・社会動態の研究や現状分析を行っている。
- 科研
・UAEにおける移民社会や外国人労働者の政策について、科研による調査が行われている。
・研究代表者 細田尚美(香川大学)「ドバイで働くフィリピン女性のアイデンティティの再編-キリスト教徒とムスリムの比較」(科学研究費補助金 基盤研究(B)2008~2010)
・研究代表者 細田尚美(香川大学)「湾岸諸国における外国人労働者:『多外国人国家』における共生・分断モデルの構築」(科学研究費補助金 基盤研究(B) 2011~2013)
11.そのほか、各地域情報など
- 日本アラブ首長国連邦協会
年に2回協会誌『UAE』を発行。最新現地情勢やUAE・アラブ・イスラームに関する論考やエッセイが掲載されている。
http://www.uaesociety.jp/ - UAEの政治体制について
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~dbmedm06/me_d13n/database/uae/institution.html
(2013年3月現在 堀拔功二)